チャットによる視聴者参加型トーク番組「ギャオ・ジョッキー」で、お笑い芸人やタレントといっしょに「ズラサン」と呼ばれるおじさんがときどき出演している。実は、彼はギャオ・バラエティのプロデューサーでありながらタレントと共演し、多くの視聴者に愛されている存在なのだ。
「ズラサン」とはいったい何者なのか、どうして番組に登場するのか、本人にきいた。

彼の本名は、神戸敏行(こうと・としゆき)、年齢50歳。インターネットコンテンツの企画・制作・運営を行う株式会社電子公園の代表取締役でもある。同社はギャオ・バラエティの制作をメインに、アニメ・キャラクターグッズや犬猫の洋服などのショッピングサイト運営、そして、携帯電話向けコンテンツの制作まで手がけている。

神戸氏はその風貌やよどみないトークの印象から何十年というキャリアを持った「芸能の業界人」と思われがちだというが、実際はそうではない。「私が芸能の世界を知るようになったのはUSENが光インターネット事業・ゲート01をスタートさせた2000年から。電子公園はその中のバラエティコンテンツを制作するために設立されたわけです。それまでは新日本製鐵で営業マンをしていました」という。サラリーマン人生から心機一転、ゼロから番組制作という第2の人生に踏み出したわけだ。

2005年から無料動画サイトのギャオが、翌年にギャオ・ジョッキーが始まった。神戸氏が最初に出演したのは、夏目ナナの冠番組・ギャオ・ジョッキー「あいなり」の第1回目。「きっかけは夏目ナナが『一人で番組をやるのはしんどい』といわれたこと。
正直、当時は制作費がギリギリだったので、タレントを増やす余裕はなかった。悩んだすえ、構成作家と私を加えた3人で番組に出演することになったのです」と神戸氏。

しかし、タレント経験がまったくないのに、どうして番組でうまくトークできたのだろうか。「それまでいろいろな番組制作で付き合ってきたタレントさんたちのおかげで、しゃべりのテクが自然に身についたのか、それとも才能があったのか分かりませんが、なんとかできてしまいました」と本人も首をかしげる。

「あいなり」後も、新番組のスターター役として出演し、チャッターから「今日はズラサンいないの?」「ズラサンが観たい」といわれるまでになった。

ちなみに、「ズラサン」と呼ばれるようになったのは、「あいなり」第1回目でのつぎのようなやりとりから。夏目「今日は私の頭ボサボサやな」、神戸「(ズラが)ズレとるんちゃう」、夏目「ズラは神戸さんだけでいいよ」。夏目「今日はグラサンの色に合わせてスミレ色のジャケットやな」、神戸「スミレ色って!? いまどき(笑)」。そして、番組で神戸氏が離席中、「ズラサン、トイレ行ったのか?」というチャットを夏目ナナが読み上げた。以後、神戸氏は「ズラサン」となった。

神戸氏は番組制作のポリシーを「出演者と制作者がひとつのチームとなって番組をつくること」という。「ズラサン」として番組に出るのはそうしたポリシーの一環なのであろう。

(羽石竜示)
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