どうも、人から「悩みがなさそう」と言われることが多いのだが、アタマにくるよ! 悩みのない人間なんていないだろうに。「悩みがなさそう」と言われるのが私の悩みです。


ところで、“悩み、嫉み、愚痴”などのストレスを全てひっくるめて「貧乏神」と呼び、そんな貧乏神をやっつけよう! と参拝する神社が存在するのをご存知だろうか。それは、徳島にある「幸福神社」のこと。

この幸福神社は、普段は行政書士として働いている石橋吉治さんが立ち上げた神社。立ち上げのキッカケには、行政書士ならではの理由がある。その辺りを石橋さんにお伺いした。
「行政書士という仕事柄、相談事や人生相談を受けることが多いんです。
ただ、ビジネスだとお金をもらわなければいけない。仕事として人生相談を受けるのではなく、中高生やお年寄りの相談に簡単に乗ってあげる場をこしらえたいと思い、幸福神社をつくりました」

この幸福神社、以前はもっと田舎の方にあったとのことだが、友人から「場所を使ってくれ」との申し出があり、現在の場所(徳島県神山町)に2006年11月に移転。神社の本殿、鳥居などは手作りで石橋さんがつくったものである。

石橋さんいわく、「こんなに話題になるとは思わなかった」とのことだが、話題になるには理由がある。それは参拝方法がちょっと変わっているのだ。
幸福神社では、悩み・ストレスの種を“貧乏神”と呼び、神社の中には石橋さん手彫りの貧乏神が。
参拝客は、その前の神木をバットで殴って、思いっきり蹴って、自分の内にある貧乏神をやっつけるのだ。その際には大声で「貧乏神、出て行けーっ!」と大声で叫びながら、というのをお忘れなく。最後は「二度と来るなーっ!」と叫びながら、神木に大豆を投げつける。
とは言うが、貧乏神撃退法に明確なルールがあるわけではない。
「気の済むまでバットで殴って、蹴って、物ぶつけて、大きい声出したら、皆さん明るくなっていきますよ。叫びも最後の方は皆さん笑い声になって、ケラケラ笑うようになっています。
悩んでいる人は、笑えばそれが一番いいくすりですよ」
こういった行為で、プラス思考にしていく。“神社”だが、拝まない。「~してください」と他力本願に拝むのではなく、自分の心を強くしていくのだ。

しかし、実際にはどういう悩みを持った方が多いのだろうか?
「多いのは、愛情面では“恋人やご主人の浮気”。あと、お子さんの問題で“子供が結婚しない”。女性には“適当な相手がいない”という悩みも多いのです。
金銭的な悩みを持ってくる人は、意外と少ないですよ。会社経営の悩みとかは、正業(行政書士)の方に来ますねぇ」
幸福神社には、純粋に石橋さんに悩みを聞いてもらいたいという参拝客も多い。悩みの種類でも、特に恋愛や肉親などの生き様の悩みは、周りに聞かれたくないもの。事務所では、どうしても事務員や来客の目が気になるものだが、神社では遠慮なく吐き出すことができる。石橋さんは行政書士の活動をしていない土日に悩みを持った方々の相手をしており、1日に20人程度の方が石橋さんの元を訪れるそう(土日以外も神社は開いている)。

参拝客の年齢層は18歳~80歳、90歳のお年寄りまでと実に幅広い。
なので、さっきまではお孫さんの相談を受けていたと思っていたら、次は恋人の悩み、と相談者は実にさまざま。

この幸福神社、参拝方法は神木を叩いて貧乏神を追い出す長野県の「貧乏神神社」を参考にした部分はあるのだが、コンセプトはオリジナリティにあふれたもの。幸福神社とは「先祖、目上の人に感謝の気持ちを持とう」という場所である。
石橋さんは、参拝に来た方に「ありがとうございます」と日頃からを言うことをすすめている。「ありがとう」ということで心が落ち着く。例えば、受験生を一番元気付ける言葉は「ありがとう・ありがとうございます」だと石橋さんは言う。
受験に臨めたのはラッキーなこと。交通事故にも遭わず、お父さん・お母さんの協力があって受験に臨めるのだと考え、「ありがとうございます」と口にすると元気が出てくる。この「ありがとう」の精神で、自殺をしようとしていた人を思いとどめたこともある。

石橋さんと直接話した印象は、本当に人間力のある方。石橋さんは現在70歳とのことだが、人生の先輩にアドバイスを仰ぎにいくのもよし。貧乏神を追い出しに、神木を殴って蹴って物をぶつけてプラス思考になるもよし。
幸福神社は、そんな形で地元の方の手助けをしている名物神社なのである。
(寺西ジャジューカ)