「はい、○○でございまーす」
「△▽ですわよねえ~奥さま」

現実では、こんなやりとりをする「奥さま」たちってあんまりお目にかかる機会がないが、子どもたちの「ごっこ遊び」では、お母さんたち・おばさんたちの声は、なぜか高く設定されているもの。

ここまで極端な例はあまりないとはいえ、実際、普段よりも、「よそゆきの声」が高くなるという女性は、少なくない気がする。

しかも、そういった「よそゆきの声」を使い分ける人は、男性よりも女性のほうが、さらに若い人よりも年齢が上の人のほうが多い印象があるのだが、これってなぜなんだろうか。

BCA教育研究所主宰者で『「裏声」のエロス』(集英社新書)著者の高牧康さんに聞いたところ、
「これは、加齢に伴う『低声化』と関係があります」
とのこと。
具体的にどういうことかというと……。
「加齢と共に諸筋肉は柔軟性を失います。声も声帯の振動によって出されているので、柔軟性が欠けてくると、振動数が減って、低い声になりがちなのです。これを、声の老化といいます」

つまり、一般的に、加齢とともに声は低くなってくるということだが、これって男女差があるのだろうか。

「この老化は男女共に進みます。ただし、それをカバーしようとする意識は、女性の方が高いようです」

確かに、近年は「アンチエイジング」が注目され、年齢肌を若くする基礎化粧品、おしゃれな白髪染め、矯正下着など、様々な商品が登場していることからも、、女性の加齢に打ち勝とうとする意識の強さがうかがえるもの。
「声についても同様で、低声化していく自分に打ち勝つように、できるだけ高めの声で話そうと励んでいる姿が、つい『よそゆきの声』に聴こえてしまうのでしょう」
そういえば、自分なども30代半ばにして、ずいぶん声が低くなってしまっている気がするけど……。これって、声の「老化」だったのか。
まだ「よそゆきの声」を使っていないのは、「老化」にあまり気付かず、抗う努力もしていないからということになるのかもしれない。

ちなみに、「声美人」という言葉があり、これはそうした年齢を感じさせない、いつまでも若々しい声で話す人のことをさすのだという。

「若々しい声は、柔軟な声帯から生まれます。柔軟な声帯は、日頃から声帯を伸ばしたり縮めたりする運動を課せなければなりません。それには、裏声発声が絶大な効果を発揮します。『よそゆきの声』そのものが『普段の声』といわれるように、裏声発声で声の老化を防ぎましょう」

「よそゆきの声」をつくることはなんとなく「おばちゃんっぽい」と思っていたけれど、声がどんどん低くなっている人にとっては特に、「裏声発声」って重要だったんですね……。
(田幸和歌子)