重機にベタベタと、A4サイズくらいの紙が貼られている。
下には、資格証のコピーと、運転者の氏名と顔写真。さらに、「安全宣言」としてこんな文句が。
「1、作業前の始業点検・KY活動(※編注:“危険予知”活動の略)を行います。2、施回及び走行時、周囲の確認を行います。3、私は必ず安全運転を実行します」
パッと見、スーパーや生協などで増えている、生産農家が記された「私が作りました」の紙のようにも見えるが、重機によってはこの紙が3~4枚も貼られていたりする。
しかも、工事現場で、わざわざ重機に近づいて見るような人はほとんどいないけど……。
これって何のため、いつから始まったことなのか。最近、重機横転事故などが立て続けにあったせいか。何か法で定められたのだろうか。
首都高速道路株式会社に聞くと……。
「特に法などで決まっているものではありませんし、重機の会社は複数社あるわけですが、こちらから指示を出しているわけでもありません」
実際に作業にあたっている会社の1つ、千葉県の大下内興業に聞いてみると、こんな回答があった。
「こちらはわが社が始めたものではなく、もともとは大元の発注先、ゼネコンさんのルールのなかで、下請けに出された指示です。山手通りの工事現場の重機にはいま、みんな貼ってあると思いますよ」
きっかけは予想通り、度重なる重機の事故だというが、
「現場では定期的に『安全パトロール』というのを行っています。パトロールのときに、誰が見ても重機の運転者がわかるよう、また、運転者がちゃんと資格を持っているということがわかるように貼っているんです」
とのこと。
一般の通行人に対してというよりも、現場の安全パトロール用に貼っているものらしい。
ということは、かつては資格のない人も乗ることがあったということ?
「そうですね。資格のない人が乗ってトラブルになる現場もやっぱりあって、そういったことがないよう徹底されるようになっているはずですよ」
ただし、こうした貼り紙は、山手通りでは最近目立っているけれど、「千葉あたりではもう10年ぐらい前からやっていた」という話もあった。
ところで、無資格で重機運転……と聞くと恐ろしい気がするが、調べてみると、無資格者による重機事故はこれまでかなりの事例があるよう。
ちなみに、自分の所有地を造成する場合などは、無資格でも重機の運転ができるが、もちろん「事業」においては無資格者での運転は禁止されているし、事業者も無資格者に運転業務をさせてはならないことになっている。
ちょっと不思議に見えた重機の貼り紙。安全を守るために重要な役割を担っているようです。
(田幸和歌子)