何を隠そう、私はプロレスファンなんですが、我々のような人種がよくする妄想が「もしも、自分がプロレスラーだったら?」。ふとした時に「自分だったら、この曲で入場」とか「こういう技を使って、こういうタイプの選手になって……」と、頭の中でシミュレーション。
これが実に楽しい。

中でもマスクマン。ミル・マスカラス、デストロイヤー、スーパー・ストロング・マシン……、普段の生活ではあり得ない非日常的なキャラクターは、昔から憧れの的だった。

そんな一般人の憧れを、現実のものにしてくれる専門店がある。それは、東京都新宿区にある「覆面屋工房」のこと。
こちらは、現役プロレスラーのミステル・カカオ選手が職人を務めている、プロレスラー向けのコスチューム工房。
新日本プロレスや、みちのくプロレスなど様々な団体の覆面レスラーのマスクをつくっているのは、実はここ。ライガーやタイガーマスクの衣装を手がけているのも、この店!
このファンには見逃せないスポットへ、7月某日にお伺いしました。

店内にはマスクやフィギュア、プロレス誌などが所狭しと飾られている。その奥には、黙々と作業をする一人の男性が。この方が覆面工房の職人、ミステル・カカオ選手だ。

この工房の嬉しいところは、一般の方からの発注を受けて、オーダーメイドの覆面を製作してくれるところ。

しかし、どういう人がどんなタイミングでマスクを発注するのだろうか? カカオ選手にお伺いしてみた。
「結婚式の出し物の際に被ったり、イベント用が多いですね。あとは、学生プロレスの部員たちが学園祭のシーズンにオーダーしたり。他にあるのが、プレゼント用です。その場合、記念日に贈るので、マスクに日付やメッセージを入れるデザインの発注が多いです」

マスクはオーダーしてから1~2カ月で出来上がり、値段は2~3万円から。高いものでは10万円ほどするマスクもあるという。
実際のプロ用マスク職人に手がけてもらうのだから、品質は言わずもがな。

そして、プロレスファンとして気になっていたこと。それは、素顔だとそうでもない選手が、マスクをかぶると途端にカッコよく見えるケース。これには、何か秘密でもあるのだろうか? カッコよく見える被り方とか……。
「それは、マスクの目の位置とかですね。あと、模様を貼っている位置とか。
カッコいい被り方とかはないですよ」
じゃあ、あのマスクマンは顔と覆面の相性がすこぶる良かったのだな! 誰とは言わないけども……。

ちなみにカカオ選手、つい最近も試合に出場しているのだが、この対戦カードがスゴい。タイガーマスクと組んで、“マスクド・スーパースター、スーパー・ストロング・マシン組”と対戦している(7月4日「流星仮面FIESTA」)。
結果は、12分4秒 フライング・スリーパーからの体固めで、マスクド・スーパースターがカカオ選手にフォール勝ち。

ご存知だろうか、“流星仮面”マスクド・スーパースターを。アントニオ猪木らと互角の勝負を展開してきた、ネックブリーカードロップの名手! この方、最近はプロレスの傍ら少年刑務所などの施設に慰問に行き、非行少年の更生などの活動を行っているという。

犯罪を犯さないと生活できない子どもたちが、アメリカにはまだまだいる。そんな少年らが生活している施設は、劣悪な環境が多く、十分な教育を受けさせてあげられないことも多い。そこで施設改善のため、61歳という高齢でリングに上がり続け、ファイトマネーは施設に寄付し続けているマスクド・スーパースター。
その一環として、今回来日したというのだから泣ける。まさに、実写版・伊達直人(『タイガーマスク』)!
そんな活動に賛同しての、7月4日の興行だったという。プロレスも、まだまだ捨てたものではないのだ。

(寺西ジャジューカ)