流行の薄いノートPCを実現している大きな要素のひとつは、天板(液晶カバー部)の薄さであろう。ところで、満員電車に乗ったとき、「カバンの中でパソコンが……」と心配になった人は多いのでは。
そこで、今回は天板を中心にパソコンの薄型化の問題を考えてみる。

以前、「屋外でつながる高速無線インターネットの使い心地」で紹介のように、ノートPCを持って外出すれば、ネットで情報が速くて快適に見られるようになった。すると、つぎは「持ち運びには薄くて軽くて小さいものがよい」というニーズが強まり、超薄型モデルやネット機能に限定した低価格なミニノートPCがつきつぎ登場した。

しかし、この現象には一方でリスクがともなう。それは薄型化によって頑丈さに黄色信号が点灯しているのだ。とくに、天板の中には非常に薄いガラス板などが入っているので、薄型化し過ぎると、加圧によって液晶モニターが壊れてしまう可能性が高まる。

東芝製ノートPC『dynabook SS RXシリーズ』の場合、ボディ素材に軽くて丈夫なマグネシウム合金を使用し、強度が必要な天板中心部を厚くしている。「携帯性を考慮したデザインのノートPCでは、天板以外の多くの部分で薄くした結果、最も薄い個所で、19.5ミリを実現しました」(東芝)。

また、パナソニック製ノートPC『レッツノートシリーズ』のように、マグネシウム合金の天板を平面のまま整形するのではなく、自動車のボンネットのようにプレスラインをつけ、その凸部で強度を高めるという方法もある。

このように、いくつかの薄型ノートPCでは天板を技術的に強化しているが、他のノートPCに比べてかなり高価になってしまっているのが難点。
では、天板を薄くするのは危険なので、それ以外を薄くするとどうなるか。コネタ記事「薄型キーボードは壊れやすい?」で見た通り。
痛し痒しなのである。

「大事に持ち歩けばいいじゃないか」との指摘もあるだろう。確かに満員電車でも圧迫されないアルミ製カバンのようなハードケースに入れておけばよいことなのだが、そうすると荷物の重量が増し、手や肩に負担が大きくなる。これも、痛し痒し。

頑丈さをいかに担保するかは薄型ノートPCの宿命。どうしても逃れられないジレンマだ。
「薄い、安い、強い」の三拍子の揃った薄型ノートPCが登場するのは、いつの日のことか。
(羽石竜示)
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