2009年は世界天文年であり、関連イベントが数多く行われている。ということで今日は宇宙についての話。


日本には様々な昔話があるが、実はこの中には、宇宙にまつわるものもある。たとえば、「竹取物語」に登場するかぐや姫は月の住民だった。他の物語はどうだろう。

「浦島太郎は、宇宙旅行の物語であるという可能性が考えられます」

とは、京都大学宇宙総合研究ユニットと京都精華大学の共同事業「宇宙とアート」プロジェクトに参画している、京都情報大学院大学教授の作花(さっか)氏の言葉。一体どういうことだろうか?

「浦島太郎」の原型は、奈良~平安時代の物語集、「丹後国風土記」にある「筒川嶼子(つつかわしまこ)」だといわれている。ここでのストーリーは、一般的に知られているものとは若干異なるのだが、ここに、ちょっとした秘密が隠されているらしい。ということでストーリーを簡単に紹介してみよう(なお、丹後国風土記では主人公の名前は浦島太郎ではないが、ややこしいのでこの名前を使うことにする)。

「昔々、浦島太郎は船で大きな亀を釣り上げた。亀は乙女に変わり、浦島太郎を蓬山(とこよ)の国に誘った。乙女が船をこぎはじめると太郎は眠ってしまった。目を覚ますと光り輝く島に着いていた。島の屋敷に連れられた浦島太郎は、『昴星(すばるぼし)』『畢星(あめふりぼし)』と呼ばれる子供に出会った。
浦島太郎は島で3年過ごした後、故郷に帰ることにした。太郎が故郷に戻ると、太郎が知っている人は誰もいなかった。太郎が島で過ごした日々は3年だったが、地上では300年が経っていた」

これのどこが、宇宙旅行の話なのだろうか?

作花氏いわく、「最も重要なのは、島で浦島太郎を出迎えた子供」とのこと。昴星、畢星というのは、おうし座のプレアデスとヒアデスという星で、それぞれ地球から410光年、140光年の距離にある。このことより、「浦島太郎が訪れた蓬山の国は、おうし座星団の中にある、どこかの星だった可能性が考えられます」とのこと。浦島太郎は、亀に乗って竜宮城に行ったのではなく、超高速の宇宙船ではるか彼方の星に行った、ということになる。どひゃー!

物理学では、ものすごく速い乗り物に乗ると、中にいる人の時間の流れがゆっくりになることが知られている(これをウラシマ効果とよぶ!)。浦島太郎が超高速の宇宙船に乗ったと考えると、浦島太郎が島で過ごした時間と、故郷での時間の進み方が違っているのもある程度説明がつく。浦島太郎は、はるか彼方の星に住む宇宙人との、コンタクトストーリーだったのだ!?

真偽のほどは、もちろん、誰も知らない。作花氏も、「ウソかホントか、という問題ではなく、星空を眺めながら、こんな妄想にふけってみるのも、天文年ならではの体験なのではないでしょうか」とのこと。

ちなみに、作花氏も参画する「宇宙とアート」プロジェクトでは、最新の宇宙科学成果を用いたアート作品の制作などを通し、宇宙を身近に感じてもらえる様々な取り組みを展開している。この秋、宇宙に浸りたい人は、ぜひチェックしてみてはいかがだろう。

(珍満軒/studio woofoo)
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