不老不死という、人類の崇高な夢(?)の実現に向けて研究している人がいる。京都大学フィールド科学研究センター瀬戸臨海実験所の、久保田信准教授である。
かねてからお会いしたかったこの魅力あふれる研究者に、先日ついにお会いすることができた。

久保田氏が所属する京都大学瀬戸臨海実験所は、西日本を代表するリゾート地、南紀白浜の半島の先端に位置する。久保田氏はここで、「ベニクラゲ」というかわいいクラゲの一種を研究している。ベニクラゲは最大で体長1センチほどの小さな生物だが、ものすごい能力を持っている、それが、不老不死(より正確には、若返り)だというのだ。

久保田氏いわく、「ベニクラゲは、成長の段階で、ポリプというイソギンチャクに似た形態になるのですが、ベニクラゲは、傷ついたり死にそうになったり、あるいは老化すると,ポリプに逆戻りすることができるのです。それも何度でもできます」とのこと。
ポリプは他のクラゲでも見られる形態だが、成長したクラゲが繰り返しポリプに戻れるのは、ベニクラゲだけなのだそうだ。

その後、久保田氏からベニクラゲの生態に関して数々の驚くべき事実をお話いただいたが、詳しくは久保田氏のウェブサイトをご覧いただくこととして、ここでは割愛する。久保田准教授がさらにすごいのは、ベニクラゲの研究に没頭するあまり、「♪ベニクラゲ音頭」なる曲を制作し、CDやDVDまでリリースしているということである。久保田氏いわく、
「ベニクラゲの魅力をたくさんの方に知ってもらいたいという思いで、歌いはじめました」
久保田氏自らが作詞し、作曲や編曲は別の方がおこなっているのだそう。

筆者は幸運にも、このベニクラゲ音頭を生で聴くことができた。「ぼくの名前はベニクラゲ、ちっちゃいちっちゃいクラゲです」から始まるこの音頭では、ベニクラゲの不思議な能力である「若返り」が、軽快なリズムと、久保田氏の歌声に乗せて説明されている。
久保田氏の声は非常に若々しくビブラートも美しい。とても研究者とは思えないほどの美声である。

久保田氏は「♪ベニクラゲ音頭」以外にも、壮大なバラード調の「♪生命・・・永遠に」や、中島みゆきを彷彿とさせる骨太なメロディーが印象的な「♪スカーレット・メデューサ ―永遠の証人―」「♪∞ベニ」など、様々なベニクラゲ音楽を制作している(スカーレット・メデューサはベニクラゲの英語名)。

ちなみに、久保田氏の研究内容、および「美声」は、世界中の研究者を紹介するウェブサイト「Zukan.TV」にて紹介されている。ベニクラゲ音頭はインタビュー後半で歌われているので、ぜひご堪能いただきたい。
(珍満軒/studio woofoo)