不況と言われて久しい出版業界において、「ドラマ化」「アニメ化」「映画化」など、華々しく飛躍を遂げる機会の多いジャンルがコミックである。「累計ウン千万部突破!」など、景気のいい言葉が炸裂するのは大抵コミックの単行本の広告だし、とかく爆発力がすごいジャンルなのだ。


さて、たくさんものが売れたことを表す目安として「富士山○個分の高さ」なんていう表現を目にしたことはないだろうか。たとえば「今まで当店が販売したロールケーキ、全部つなげると、富士山3個分にもなるんです!」とか。

で、今回はこの単位を、コミックの単行本にこれを当てはめてみようという魂胆である。コミックを何冊平積み(表紙が表になる状態)したら富士山の高さに到達するのか。
実際にそんな事はできないので、印刷のプロフェッショナル集団である大日本印刷に取材してみた。

「私どもの会社で印刷しているコミックの単行本ですと、表裏の表紙+カバーの厚さが合計で約1mm、中面の紙が厚さ約0.13mmになりますね」
なるほど、なるほど。
「単行本のページ数がだいたい200ページ前後(=100枚)と考えると、1冊の厚さはおよそ1.4cmになります」
そうなんですね、ありがとうございます!

よし、さっそく計算してみよう。
富士山の標高が3,776mだから、377,600cmになるわけだ。で、単行本1冊が1.4cmだっけ。
はい、電卓でパチパチパチっと。
ホイ出ました。269,714.2857(以下略)……ですって。

つまり、コミックの単行本を富士山より高く積み重ねるには、約26万9715冊必要になるということですな。

この数字が出たらこっちのもの。ここまできたら、とことんやる。
コミックの累計販売部数の日本記録を誇る『ONE PIECE』(2009年10月現在)を積み上げたら富士山何個分になるのか、計算してみようではないか。
集英社に問い合わせたところ、2009年10月時点の『ONE PIECE』の累計発行部数は、なんと1億7000万部とのこと。

ということは、割り算すると630.2949409(以下略)……。
なんと、すでに『ONE PIECE』の発行部数をトータルすると、富士山約630個分を超えているのである。

ちなみに、暇にかまけてエベレスト(8,844.43m)でも計算してみたら、エベレスト1個分に相当する冊数は約63万1745冊。
1億7000万を上の数字で割ると、その答えは269.0959168(以下略)……。
つまり、今『ONE PIECE』の発行部数は、エベレスト約269個分を超え、270個に挑戦中。ちなみにこれを縦置きで並べると、その全長は2,380km。書棚に並べようと思ったら、万里の長城並みの長~い書棚が必要になるのであった。


だから何だと言われたら返事に窮するわけだが、知っておいて損なことなんて、何ひとつないはず。
お気に入りのコミックがあったら、あなたもぜひ富士山何個分か計算してみてはいかがか。
(新井亨)
編集部おすすめ