デジタル全盛の時代だが、でもまだまだ銀塩(フィルム)写真の得意な被写体があると思う。そこで、論より証拠、フィルムカメラとデジカメで写真の撮り比べをしてみた。


以前、「デジカメ写真の画質の不満なところ」で説明した通り、カメラの構造的な違いのため、同じ被写体でも銀塩写真とデジタル写真では大きな隔たりがあることを指摘した。デジカメ普及前から写真を撮るのが大好きな人たちにとって、ときどき銀塩写真が懐かしくなるのは、そのためである。
デジタルは年々改良が重ねられ、かなり画質は改善されてきたし、これからも良くなっていくことだろうが、現状では銀塩のほうが上のように思える。

さて、最近よく晴れた日、東京・渋谷の街中でスナップ写真を撮ってきた。使用カメラはデジタルのほうはごく一般的なコンパクトデジカメ『ニコン P5100』。対して銀塩は、一眼レフカメラを使わなくても十分差が出ると思ったのでコンビニで購入したレンズ付きフィルム『コダック スナップキッズ800』にした。
街に入ると壁面にド派手なペインティングが施されている建物が眼に飛び込んできたので、思わずシャッターを切った。

できあがった写真を見てもらいたい。まず、右上の白っぽい建物。銀塩写真のほうはしっかり窓や縦の筋が写っているが、デジタル写真はそれがまったく写っていないのがわかる。
つぎに中央建物のペインティングに注目されたい。銀塩写真はキレイにペイント模様が滑らかでくっきり写っているのに、デジタルは露出オーバー気味で白っぽくトーンが硬い印象だ。
逆に、左側の茶色のビルは露出アンダー気味となっている。

「デジタル写真は銀塩写真、とくにネガフィルムに比べ、ダイナミックレンジがとても狭いのです」(ソニー)。
ダイナミックレンジとは銀塩写真のラティチュード(露光寛容度)に相当する意味。ダイナミックレンジが狭いというのは明るい部分と暗い部分の差が大きい被写体は苦手ということ。つまり、暗い部分に露出を合わせると、明るい部分が白くとんでしまい、他方明るい部分に合わせると暗い部分がつぶれてしまうのだ。

今回撮影した写真がダイナミックレンジの差を明確に示している。デジカメはこの被写体を観て、左側の建物が日陰になって暗いので、露出を明るめにしたのだ。その結果として、強い光が当たっているペインティング建物やその上のビルが露出オーバーとなってしまった。
この場合、撮影者が撮影の際、露出をアンダーに補正すればペインティング建物はキレイに撮れるのだが、代わりに左側建物はつぶれてしまうだろう。

レンズ付きフィルムはご存知の通り、露出もピントも固定なので、被写体の明るさに関係なく撮っている。それでも、デジカメが苦戦する被写体を楽勝で適正な明るさの写真にしてしまうわけだ。凄いでしょ?

なので、快晴の日や強い光の中で写真を撮るときは、銀塩カメラを一台持っていったほうがいいと思いますよ。

(羽石竜示)
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