先日、新宿駅近辺で賃貸情報の看板を何気なく見ると、予想外の「安さ」に衝撃を受けた。

新宿付近(丸ノ内線西新宿駅、大江戸線東新宿駅・西新宿五丁目駅など)の駅から徒歩10分圏内で、1DK5万円台などの部屋がいくつもあったからだ。

しかも、風呂トイレ別!

かつては23区内で安い物件というと、「西武線沿線がお勧め」とか、芸人なども多く住む「中野・高円寺周辺の風呂なしアパート」などを挙げる人が多かった。
ちなみに、もう15年ぐらい前になってしまうが、自分の学生時代などは、都内で家賃7~8万円台のアパートに住んでいる友人がけっこういたもの。一方、長野の大学に通っていた友人なども、「ワンルームの物件自体がそんなにないから」という理由で、2DK5万円ぐらいの部屋に住んでいたりして、「家賃はどこも高いなぁ」と痛感したものだった。
でも、いま、いちばん高い場所の1つというイメージがある新宿で、もしかして家賃がずいぶん下がっていたりするのだろうか。

新宿近辺の賃貸物件を多く扱うA社に聞くと……。
「現状でも新宿の賃貸の値段は変わらないですよ。
第一、新宿近辺には、中野などと違って、風呂なし物件のような小さな建物がほとんどありませんからね」

賃貸の市場全体としては、「たとえば10年前に比べると、1~2万円安くなっている傾向がある」そうだが、「新宿近辺が安くなっているのではない」という指摘だ。また、新宿から1~2駅離れると、多少安くはなるそうだが、
「6万円台はたくさんありますが、5万円台はあまりないと思いますよ。不動産屋はどこも同じ情報を看板に出しているだけですし」
とはいえ、新宿から1駅の場所にいる知人は風呂なし5万円以下の部屋に住んでいたし、探せば、ないってわけでもない。賃貸情報のサイトなどで検索しても、5万円台の物件はけっこうあったけど……。

続いて、多数の不動産会社の情報をとりまとめるサイト・B社に聞くと、
「新宿はやっぱり中野、高円寺あたりよりは高いですよ。5万円台がたくさんあるのも、いってしまえば、ウソ物件もたくさんありますからね」
!! それって、架空の情報ということ?
「どこでも紹介できるのは同じ物件ですから、広告は『呼んだもん勝ち』というのがあるんです。
情報を見た人を店に呼んで、来たらこっちのもんという感じで、看板に出ているのとは全然違う物件を紹介するとか、あるんですよ」
そんなことを聞いてしまうと、何を参考にして良いかわからなくなるけど……。

「安い物件は、築年数だけでなく、道路の状況や近所に何があるか・ないかによって決まります。また、類似物件(築年数・広さなど)がたくさんある場所、供給が多い場所では比較的安くなるということはありますよ」
たとえば、「新宿近辺」といっても、東新宿なら徒歩10分も行けばいろいろあるし、西新宿五丁目など、低層で昔から建っているアパートが密集する地域には、手頃な物件もあるというアドバイスをもらった。
「とはいえ、それでもやっぱり皆さんのイメージ通り、中野・高円寺のほうが安いです。一般に、新宿沿線よりも北のほうが安いというのは変わっていませんね」

高そうで、案外安い部屋もある新宿。便利な街に安く住みたい人は、ご参考に。

(田幸和歌子)