まず、在仏歴約10年というHさん(日本人男性)によると、オペラ座界隈にある日本食レストランがつくっているケースが多いらしく、オフィスのランチタイムに1折からのデリバリーも可能なのだとか。そのうちのひとつである『ももの木』のメニューを見てみたところ、「鶏の唐揚げ弁当」「白身魚の南蛮漬け弁当」「サーモンフライ弁当」などなど、けっこういい感じのラインナップ。
肝心の味については、
「日本で食べるのとあまり変わりませんが、お米もイタリアなどからの輸入だったり、野菜なども現地のあり合わせですから、微妙に何かもの足りない感じはします。魚も貝も日本ほど種類がないですね」とのこと。
なお、在仏の日本人だけでなく、フランス人にもbentoは人気らしい。
「日本食ブームなので、サブメニューのヒジキとかそういうものにチャレンジする人も多いです。でも、それを美味しいとか思うかどうかはまた別問題ですね。理解できない味かもしれません。あと、味のしない白いごはんが食べられない人が多いので、皆さん、おしょうゆをかけて食べています」
また、自分以外は全員フランス人という環境で働くEさん(日本人女性)の職場でも、毎回2、 3折から多い時は10折以上のオーダーがあるそう。
ちなみに、気になるお値段は1折=9ユーロで、やはりおふたりとも「割高」と感じているそうだ。
「パリで最もお手軽なランチはサンドイッチで4 ユーロ前後、マクドナルドで7ユーロ前後です。レストランでランチをすると10ユーロ前後かかるので、それに比べればちょっと安いくらい。
Hさんも「味についての満足度は高いのですが、毎日は無理です(笑)。500円くらいならOKですが……。お味噌汁がついてくるとうれしいですが、2ユーロくらいするので買えません」とのこと。
さらに調査してみたところ、パリの書店で画像のようなキッチュなお弁当のレシピ本が売られていることがわかった。ということは、フランス人が自宅でつくった日本式bentoを職場に持参することもあるのだろうか? これについては、
「けっこういますよ。タッパーに詰めて持ってきています。中身はパスタ系がほとんどです。いろいろなものを詰める日本のとは違って、一種類をたんまりって感じですね」(Eさん)とのことで、やはりフランス人がたこさんウインナーとか、くるくると器用に巻いた卵焼きなどをつくって持参しているわけではないようだった。とはいえ、そんなところにもそれぞれの国民性が出ていておもしろい。
というわけで、なかなか興味深かったフランスのbento事情。
(野崎 泉)