島国ニッポンには、どうしても足を伸ばしては入ることのできない庶民的なお風呂がたくさんある。

筆者の家も例外に漏れず、人ひとりはいるとギュウギュウになるくらいの湯船なのだが、この狭い湯船でどのような姿勢をとると、空間を有効活用できるのか、ということを日々模索している。


ことあるごとに、この「狭い風呂での姿勢」について色々な人に尋ね回っているのだが、これまでに得られた知見を今日は紹介したい。

まず、もっともメジャーなのは、体育座り。「無意識に入っていると体育座りになっていることが多い」という意見も多く、狭い空間を活用する上でもっとも自然な姿勢なのかもしれない。中には「なぜか足に手を回して組んでしまう」という律儀な人も……。しかしながら体育座りの場合、「足を前後に動かせないので拘束感がある」「体育の授業中のような気分になり、何となくくつろげない」といったデメリットもあるようだ。

次に多かったのが、あぐら。
「体育座りよりも足が自由に動くので楽」という意見が多く、体育座りと人気を2分する姿勢のようだ。あぐらは男性に多そうな印象もうけるが、「体育座りより楽」との理由で、女性にも指示されているスタイルでもあるようだ。
ただ、「湯船の横幅が狭いとちゃんとあぐらをかけない」という意見もあり、足が長い人にはデメリットが大きそうだ。また「座禅しているようで緊張する」という意見もあった。お風呂の姿勢を考える上では、精神的なリラックス感も重要のようである。

ただ実際の姿勢は、厳密な体育座りやあぐらではなく、これらをベースに各自が様々な姿勢を開発しているようだ。
例えば、「体育座りの状態から、足を前に出し、足の裏を湯船の壁につける」という姿勢や、「あぐらの状態から、足を少し斜めに立てて腕を組む」など、自分の体と湯船の形状をもとに姿勢が最適設計されている様子がうかがえる。

ちょっと特殊だったのが、体育座りの変則系として、「体育座りの状態から体を後ろに倒し、背中を湯船の底につけるような感じでお湯の中に浮かぶ」という姿勢。ちょうどお腹の中にいる赤ちゃんのようにぷかぷか浮くので、実践する知人はこれを「胎児スタイル」と勝手に呼称していたが、この姿勢だと狭い湯船でも首までしっかり湯船につかることができ、また足が自由に動くので拘束感も少なく、それなりにリラックスできるとのこと。しかしながら、その分、足がお湯からはみ出しやすいため、末端冷え性の方にはあまりおすすめできない。

また、ダスキンホームインステッドのウェブサイトでは、冬のお風呂の入り方として、「日本式の深く狭い浴槽に入る場合、高血圧の人はイス(お風呂用)を浴槽に入れるなどして水位を調節し、 首までどっぷりとつからないようにしましょう」とあり、「胎児スタイル」は寒い時期には健康面で一抹の不安もありそうだ。

結局、ベストな姿勢は人によって様々なようだ。
皆さんの入り方、ぜひ教えていただきたい。
(珍満軒/studio woofoo)