1975年に登場し、今年で35周年となるロングセラー商品「黒ひげ危機一発」。誰もが一度は遊んだことのある定番人気ゲームだろう。


だが、ふと疑問に思うのは、そもそもの遊び方が変わったのではないかということだ。
今はパッケージなどにも「飛び出したら負け」と書いてあるが、確か昔は「飛び出したら当たり」だった気がする。

というのも、もともとこのゲーム、タルの中で縛られたままの黒ひげを、子分が剣で縄を切って救出=飛び出させるのが目的であったはず。ルールがいつの間にか変わったの? だとしたら、なぜ? タカラトミーに聞いた。

「確かに『黒ひげ危機一発ゲーム』は1975年に発売されたときは、タルの中で縛られたままの黒ひげの縄を切って救出するというゲームで、パッケージにも『飛び出させた人が勝ち』と書かれていました」
と言うのは、カード・トイゲーム事業本部の名和香織さん。
やっぱりそうだったか! だが、4年後の1979年のパッケージでは「飛び出したら勝ちまたは負け(遊ぶ前にどちらにするか決めてから遊んでください)」と変わったという。
つまり、自分でルールを選ぶという方法だ。理由は?
「ずいぶん昔のことなので、諸説あるのですが、当時の某人気テレビ番組で使用されていた際、『出ると負け』として使われたことが理由のひとつだと思われます。当時は今よりもみんながテレビを観ていて、メディアの影響力が非常に大きなものでした。『黒ひげ』自体の人気も番組によって火がついたところがあるんですよ」

さらに、「飛びだす→罰ゲーム」というゲーム性のほうが、自然な流れととらえる人が多かったということもあるらしい。
「メーカー側としては『飛び出したら勝ち』としていたのですが、消費者の流れのほうに乗ったかたちですね(笑)」

そして、しばらくは「勝ちまたは負け(遊ぶ前にどちらにするか決めてから遊んでください)」という表記が続き、大きく変わったのは、1995年。
「オリジナルの黒ひげが『元祖 黒ひげ危機一発ゲーム』としてリニューアルされ、『飛び出させたら負け』となりました」

キャラクターバージョンは、ミッキーマウス、スーパーマリオ、近年では「パイレーツ・オブ・カリビアンのジャック・スパロウ」など、その都度、「勝ちまたは負け」、あるいは「負け」となったりしているが、オリジナル(元祖)バージョンは1995年以来、ずっと「飛び出させたら負け」なのだそうだ。

「みんなが知っていてわかりやすいことから、テレビ番組やイベントなどで使用されることが多いですね。パーティーゲームとして、罰ゲーム要素が強いので、『飛び出したら負け』として定着したということが1つ。また、飛び出すとどうしてもビックリするものなので、それが『やった!』とか『勝ち』というよりも、『わっ、出ちゃった!!(ショック)』という感覚のほうがユーザーのご意見として多かったことはあると思います」(広報室広報課 鈴木寿伸課長)

35年間の中で、メーカー側の企画意図とは別に、消費者側の流れにのって変わってきた遊び方・ルール。
広く愛されているゲームならではの、自然の変化だったようです。
(田幸和歌子)