私はペットを飼ったことはないのだが、ワンちゃんやネコちゃんを育てる彼ら彼女らの愛の深さは知っている。評判は聞いている。
ペットはまさしく家族の一員。家ではいつも一緒。出かけたとしたら、帰宅後はその時間を惜しむように戯れる。

……というか、本当はひと時も離れたくないのではないか? だからこそ、このサービスが世のペット愛好家の話題を呼んでいる。静岡にあるブランド「SHIN’S(シンズ)」が販売するストール(税込み28,000円)と膝掛け(税込み33,000円)には、飼い主さんが泣いて喜ぶエッセンスが加えられた。

これらの商品には“ハートフラワーマーク”なる特徴的なデザインが施されているのだが、マークの刺繍にはお客さんのペットの毛を使用するそうなのだ。

たとえペットと離れていたとしても、手持ちのストールや膝掛けのマークの部分をナデナデしたら……。まるで、ペットと一緒にいる気分になれる。遠くにいても、以心伝心。

ちなみに「SHIN’S」を運営する小野さん夫妻も愛犬家。そんなお二人だからこそ、この企画は生まれた。
その辺りの、サービスを開始したキッカケを御主人の隆さんに伺ってみた。

「以前、一緒に生活していたゴールデンレトリバーのグルーミングでとれた黄金の被毛を見て、捨てるに忍びないと思ったのが最初の動機です。また、3年ほど前にあった長期の国内出張が、ブランド立ち上げの一番大きなキッカケとしてあります。家族とは電話などでコンタクトできるものの愛犬達とはそうもいかず、悶々としたのが原点でした」

御主人・隆さんの本業はフリーの工業デザイナー。作業工程は、隆さんが「マークを刺繍する際のアイテムへの位置決め」などのデザイン面を担当する。奥さんの久美子さんが「犬猫の毛による糸紡ぎ」、「刺繍によるハートフラワーマーク製作」などの工程を担当している。

しかし、この技術が大変なのだ。
久美子さんは“糸紡ぎの技術”を学ぶべく、2年前に地元の牧場の「羊毛での糸紡ぎ教室」に入り、基本技術を習得。その後、自宅で犬、猫の毛を使った紡毛技術の練習に励むように。そして今年の6月より、ようやくサービスとして本格化。久美子さんの技術が、陽の目を見るようになったのだ。

そこで、またひとつ突っ込んだ質問をしてみた。これは、犬と猫のみに対応しているサービスなのか? なにせ、現代はペットも多様化しているだけに。

「基本的に被毛で覆われている動物なら紡毛可能なので、そういう指定があれば製作可能だし、やってみたいと思っています」
短い毛の場合は羊毛と混ぜて紡ぐので、あらゆる動物に対応できるらしい。

注文方法は、ブラッシングなどで抜けた長さ2.5センチ以上の毛を、5グラムほど集めて同ブランドに持ち込む。そうすると、注文から早くて3週間で商品は完成となる。

このサービス、当然ペット愛好家からの注文が相次いでいる。中には、こっそり毛を集めて身内へのサプライズプレゼントとして考えている人もいたという。
また、愛犬や愛猫のメモリアルとして注文される場合もあったそうだ。
実際、このサービスの最初のお客さんは地元の動物病院。余命いくばくもない老犬の飼い主さんへSHIN’Sの膝掛けを病院からのプレゼントとして考えた。結果、まだ生きている愛犬からの贈り物に、その飼い主さんはとても感動したという。

問い合わせは「SHIN’S」のサイトへ。

このストールと膝掛けで、距離をも越えたコミュニケーションを。愛の深さがあればこそ、成立するサービスである。

(寺西ジャジューカ)