日本の打ち揚げ花火は丸い。打ち揚げる玉も、開いた花も丸い。

でも、日本よりも先に打ち揚げ花火が発達した欧米では、円筒形の花火を打ち揚げ、空では柳が垂れるよう一方向に開くのが一般的。
今でこそ、欧米でも日本の丸い花火は増えているけど、世界で打ち揚げ花火といえばもともと丸くはなかった。

じゃあ、一体どうして日本の打ち揚げ花火は、丸くなったんだろう? 日本煙火協会に話を伺った。
「日本の場合はですね、花火という名の通り、菊とか牡丹のような“花”に見せるという発想から来ているんですね。花は円形ですよね。まんまるい花を咲かせるという、美的な完成形が、球形だったんですね。
日本の花火は、そうした強いこだわりとともに、丸いものとして発達してきたんです」

欧米の花火は、何か催しがあるときのアトラクションのひとつとして、打ち揚げられてきた。例えば遊園地では、遊びに来たついでに見る花火大会、のような位置づけだった。
一方で日本の花火は、花火大会という独立したものとして発達してきた。花火そのものを見せるため、花火大会が開かれてきた。だから、一発ずつの美しさを見せることが重視され、丸くすることで美しさが表現された。

さらに、日本には花火を丸くできるだけの土壌があった。

日本各地に、だるまなどの人形を張子(型に紙を何枚も張り重ねて、乾いてから中の型を抜き取って作ったもの)で作る民芸が古くからあって、それが和紙で球形の玉皮を作る技術に活きた。それに日本人には、特有の凝り性や手先の器用さがある。一発ずつ打ち揚げることを美しいとする、侘び寂びの文化もあった。

そこに、日本の花火師の命がけの努力が加わり、丸く美しい花火は完成した。円筒形なら底に詰められる緩衝剤を、球形の花火には使えず、花火師は常に死と背中合わせだった。花火を球にすることで、ちょっとの衝撃でも爆発する危険性が強まった。
にもかかわらず、日本の花火師たちは、夜空に丸い花を咲かせるため、命がけで改良し続け、一発の美しさにかけてきた。
その結果が、丸い花火を生んだと言われている。

まあ、昔は花火師たちの競技会が盛んで、賞金が出たから、花火の技術が急速に伸びたという側面もあったりするみたいだけど。

そうして、たくさんの理由で丸くなった、日本の花火。
「花火」と「Fireworks(ファイヤーワークス)」という言葉の違いにも、それはよく表れている。
(イチカワ)