他人の本棚は興味深い。「この人の興味は、こういう分野なのかぁ」という感慨から、「こういう青春時代を送ってきたのか」。
人の本棚を見ると、自分の中で勝手なストーリーをいくらでも構築していける。
コレ、知人の家にお邪魔したときにスゴく楽しい妄想なので、皆さんに是非ともオススメしたいんです。

そんな妄想を、誰もが知ってる著名人相手にできるとしたら……。
できるんです。それは、大日本印刷株式会社が7月17日から10月31日の期間、開催している「本棚と私たち」なる展示で。

2010年は国会決議で制定された「国民読書年」だということで、実施されているこの企画。
その活動の一環として、この展示では様々な形での読書の提案がなされている。中でも最も興味深かったのが「私が見たいあの人の本棚」というコーナー。
佐野元春(ミュージシャン)、日比野克彦(芸術家)、武田双雲(書道家)という、各分野の一線級の著名人が今までに感銘を受けた本が集められ、“本棚”となって展示されてるそうなのだ。

3人すべての嗜好が気になるのだが、中学時代に『アンジェリーナ』(佐野元春のデビュー曲)を聴きまくった思い出のある私にとって、特に佐野さんの本棚の内容が非常に気になる……。

というわけで東京地千代田区にある展示会場に行き、実際に楽しんできました。
元は学校の校舎だった建物の一室に入ると、そこには楽しげな本が「読んでください!」とばかりに、たくさん用意されている。


そして部屋の一角には、3つの本棚がギターや書道用具などと一緒に佇んでいる。
ギターと共に展示されているのは、もちろん佐野元春の本棚。まず目に付いたのは、彼が中高生の頃によく読んでいたサリンジャーの『フラニーとゾーイー』という小説。それぞれの本には、選者からの簡単な解説も紹介されており、元春はこの本で語られている“仏教の考え方”に関心を持っていたという。
また、ジョージ・マーティン(初期ビートルズのレコーディングプロデューサー)の『耳こそはすべて』なんて本も納められており、「あの人らしいな」とニヤリ。

他にも、日比野克彦さんの本棚には芸大受験で悩んでいた頃によく読んでいた詩人・八木重吉の『こころよ いっておいで』や、人柄・作風に影響を受けた先輩だという『早川良雄の世界』が。

武田双雲さんの本棚には、会社を辞めるときに読んで未来が見えたという『「原因」と「結果」の法則』(ジェームズ・アレン)、本屋で読んで涙が止まらなかった『生き方上手』(日野原重明)などの本たちが。

すごく興味深かったのだが、この3人の人選の理由は? 同社の担当者に話を伺った。
「それぞれの分野での第一線で活躍しており、この企画に賛同していただける方の本棚を紹介しております。誰もが知ってる著名人も、“読書ファン”としてどんな風に本を読んでいらっしゃるのか、気になりますよね」

またこのスペースでは、最近急激に普及してきている電子書籍についてもフィーチャー。
「Tacto(タクト)」なるデジタルデバイスは、パッと見テーブルのようなタッチパネル。ここに指を置いて動かすと、カラフルな線を引くことができる。
これが進化したら、パネル上に本が現れ、ページをめくったり、向かいの人に本を指で持っていってあげたり、そんな事ができるようになるらしい。
また、恐竜図鑑や魚図鑑の前にはパソコンが。図鑑を開くと、パソコンの画面上には図鑑で紹介されている恐竜や魚が出現。造形や動きを、わかりやすく目で確認することができる。
当然、iPhoneやiPadなどで新聞、雑誌、マンガなどによる電子書籍の体験が可能。“アナログ”にこだわることなく、様々な読書の可能性を提示している。


同社の担当者いわく、
「新しい読書環境として、我々も“コレ!”というサービスが見つかっているわけではありません。色々な形を提示して、『みんなと一緒に探していこう』と考えております」

この展示は、図書館のごとく長居して本を読みふけっていても注意されることはない。当然だ。読みたいものがあれば、じっくり読みたいもの。気になる人は、遊びに行ってみては。
今年、2010年は“国民読書年”である一方、“電子書籍元年”とも言われているそうで。
そんな状況を、じっくり体感できます。
(寺西ジャジューカ)