我が家に定期的に通ってくる猫は、撫でられるのがとても好きな猫で、撫でるとすぐにゴロゴロと喉を鳴らす。

洗濯物でも干そうかと庭に出た途端に飛んできては「ニャー(撫でて撫でて)」と 、小首をかしげるように見上げてアピールしてくるので、 もはや撫でるのが毎日の習慣になっているわけなのだが、最近、撫でようと手を伸ばすと、手を見ただけですでにゴロゴロ言いはじめていることに気がついた。


「猫は気持ちがいい時にゴロゴロ言う」のは有名な話だが、それって、もう撫でられていることを想像して気持ちよくなっているということなのだろうか?

他の猫はどうなのだろうかと、さっそく周囲の愛猫家たちに聞いてみると、中には「うちの猫はどうもゴロゴロ言うのを負けだと思っている節があり、ついゴロゴロ言ってしまってはハッとやめる」というなんとも漢らしい猫もいたが、おおむね「飼い主の顔を見るだけでゴロつきまくる」程度にはゴロゴロ言いまくっているようだった。

そこで、以前コネタでも触れた『猫毛フェルトの本』『もっと猫毛フェルトの本』(飛鳥新社)の著者であり、猫の行動について考察するメールマガジン「猫のおきて」を発行するなど、猫的活動を精力的に行っている蔦谷香理さんに質問してみたところ、

「猫は気持ちいい時もそうですが、それを含む“機嫌がいい時”にゴロゴロ言います。そして具合が悪い時、傷ついた時、出産の時などにもゴロゴロ言うことがあります。これは逆に、ゴロゴロ言うことによって無事安心な精神状態を得ようとしているのではないか、と考えられます。 ご質問の“さわられる前からゴロゴロ言っている”ことについては、想像しているというよりは、優しくしてもらえるので、ご機嫌でゴロゴロ言っているのではないでしょうか」

とのこと。ちなみに、子猫時代に母親のお乳を飲みながらゴロゴロ言うのが、猫のゴロゴロのはじまりなわけだが、どのようにしてこの音を出しているかについては、未だ専門家によって議論されているらしく、デズモンド・モリス著『キャット・ウォッチング PartII』(平凡社)によると、ゴロゴロ言う音を咽頭で発するとみる「仮声帯説」と、大動脈から心臓に向かう血流が増すと、乱流が生じるのが原因とみなしている「血液乱流説」、2つの学説があるようだ。


閑話休題。猫がさわられる前からゴロゴロ言っている件について、猫に想像力があるのかは猫のみぞ知る、と言ったところだが、顔や手を見るだけでゴロゴロ言われたら「なんて愛い猫…!」と、ますます熱心に撫で撫でしてしまいそうです。
(磯谷佳江/studio woofoo)