ゾンビが盛んな欧米圏でも認められている名作シリーズ「デッドライジング」、そのプロモーションとして撮影されたゾンビ映画「屍病汚染 DEAD RISING」。ゲームと映画、ゾンビの二大メディアを制した稲船さん。
いよいよそのゾンビ観と最新作「デッドライジング2」について話を伺います!
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ーー稲船さんはゾンビのどこが好きですか?

稲船 ゾンビ映画は人間の醜さを描く映画じゃないですか。そこが好きですね。ぼくはストレートな人間なんで偽善が嫌いなんです。もちろんちゃんとした善もあります。ちゃんとした人達もいます。その人達がもっと胸張って生きていけなきゃいけないのに肩身が狭い思いをしている。偽善者だらけの世の中です。それを皮肉りたい。社会風刺したい。だから「ゾンビっていうのは、偽善をやっている人達だ」と。

ーーほんとにストレートですね!

稲船 ぼくは人間についてこういう見方をしています。もしゾンビが出てきたら大変なことですよね。
人間の強さが試される。一番弱い人は諦めちゃう人です。もし襲われたら、逃げるんじゃなくて諦める。諦めちゃったらラクじゃないですか。もう逃げなくて済むしゾンビになって獲物を追う側に回ってしまえばいい。

ーーゾンビ同士は共食いしないですしね

稲船 もうちょっと強い人間ならどうなるか。たとえば誰かと一緒に逃げていてゾンビが襲ってくるとします。そのときに連れを逃がすんじゃなくて「こいつを食べて!」と突き出す。お食事中に俺は逃げるよ!と。たぶんほとんどの人間はそうします。正当防衛。生き延びるためなら仕方ない。
しかも二人っきりなら誰も見てないですよ。

ーーすごく確信された語り口ですね

稲船 ぼくね、新婚旅行でオーランドのすっごい怖いお化け屋敷にいったんです。「テラー・オン・チャーチ・ストリート」(1999年5月に閉店)っていう。五人くらいで前の人の肩を持って歩いていくんですけど、一番前と一番後ろがむっちゃ怖い。だから奥さんを前に置いて後ろから守ることにした。最後にちょっと広めの吊り橋を渡るんですけど、「はあ、終わった。出口が見えるー」って安心したところで、ブワーン!って。チェーンソー持った奴が後ろから走ってくるんですよ。後ろを守っていたはずが、ぶぅわーって逃げて、……奥さんを追い抜いていました。もう、ね。いわれましたよ。「ひどい。
本性が分かった」って。とっさだったから「ごめん」ってかんじです。でも、みんなそうなんですって。ぼくは「絶対守る」とは言いません。偽善者にはなりたくないんで。「ごめん、もしかすると放っていくかもしれない」って言います。自分さえ良ければいい。周りの人間が犠牲になっても自分だけ助かればいい。これが諦める人間の次にくる“サイコ”です。ここが一番多いんじゃないかな。

ーー「デッドライジング」シリーズでは、サイコは主人公の邪魔をする中ボスとして出てきますね

稲船 その次に強い人が、絶対に生き延びようっていう人です。奥さんか、子供か、友達か、誰かを守るために生き延びなきゃいけない人間が自分の弱さを克服できる。
守るものがなければ、諦めてしまうかもしれない。サイコになるかもしれない。自分が犠牲になっても誰かを助けなきゃいけないと思わないかぎり、本当の善にはなれない。あくまで偽善ですよ。そういうことを描いているものがぼくにとって合格のゾンビ映画です。やっぱりゾンビ映画って人間ドラマがシンプルに描けるんですよ。人間の恐怖や欲望を象徴しているから。それは「デッドライジング2」でも描いています。ゾンビはただフレッシュミートを食べたいだけ。自分のことかカネのことしか考えてないサイコは、結局ゾンビと一緒。そんな中で、主人公のチャックは娘を守るために自らを危険に晒してもゾンビやサイコと闘って生き延びようとします。

ーーすごく楽しみです!「デッドライジング」シリーズはゾンビに襲われるというよりもむしろこちらから探して倒していくゲームで、ゾンビが出るゲームの中でも独特です。
この発想の違いはどこから出てくるんでしょうか?

稲船 それはゾンビ愛ですよ!ゾンビを主役にしたいんです、ぼくは。だからプレイヤーは、主役を襲う側にしている。他のゲームって、たまたま敵がゾンビでただ撃つだけ。敵が侵略してきた宇宙人でも地底人でも一緒です。それに撃つだけなら、見た目さえ変えればいろんなゾンビゲームを作れます。武器を刀に変えて侍ゾンビゲームになる。宇宙でやれば「デッドスペース」になる。でも「デッドライジング」は違う。ゾンビが出ないと成り立たない。このテイストは「デッドライジング」でしか味わえません。オンリーワンです。これがゲームデザインです。


デッドライジング2
前作のショッピングモールからラスベガスのような歓楽街を舞台を変えて、斬ったり燃やしたり爆破したり、DIY で作ったコンボ武器でゾンビと”正しく”ふれあう「ゾンビパラダイスアクション」。主人公も一匹オオカミのジャーナリストから娘を助ける父親に代わり、ゾンビ人権保護団体やゾンビを見せ物にしたテレビショーが参戦!より深みが増した社会風刺、人間ドラマに期待が抑えきれません。9/24 に先行販売されたイギリスではゾンビがバスを待つほどの浮かれぶり。体験版の「case:0」も配信中。600 円でコンボ武器でのゾンビのふれあいもサイコとの戦いも体験できます。迷っている方はまずこちらから試してみては。続きはこちら(tk_zombie)
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