現地から“ホンモノ”が届くと人気の輸送コーナーは開店10分後の時点ですでに大行列。ざっと200人近くが並んでいた。しかも、人数を数えている間にもどんどん行列が伸びていく。マジか!?
さて、大会から遡ること3日。渋谷にあるバー「Bar Isshee」は、京王駅弁大会の会場に負けずとも劣らぬ熱気に包まれていた。京王駅弁大会のチラシ(こちらでダウンロードできます)を片手に侃々諤々を繰り広げる人々。駅弁大会をこよなく愛する“大会派”の恒例行事<チラシ飲み>だという。彼らはいったい……?
この日、<チラシ飲み>に参加したメンバーは4名。20年以上京王駅弁大会に通い続けているという茂木功さん(編集者)、mixi「京王駅弁大会」コミュニティを主催する安田理央さん(ライター)、だるま好きが高じて京王駅弁大会にハマッたというデザイナーの桜田幸子さん。そして、フーターズレビューでおなじみのエキレビライターのとみさわ昭仁さんだ。
「まずは開幕戦をどういくか」「僕の第一候補は新青森駅の『海鮮ひつまぶし』。でも、絶対行列する……」「初日にわざわざいかなくてもいいでしょ。どうせ毎日行くのに」と検討を重ねる姿は真剣そのもの。現場には尋常ではない緊迫感が漂っていた。つまみはナッツのみ。まさに「肴はチラシ」の会合なのだ。
安田 僕らも遊びじゃないからね。気持ちの上ではもう始まっているんですよ。
茂木 でも勘違いしてほしくないのは、「僕らは「駅弁」も好きだけど、それ以上に「駅弁大会」が好きなんですよ。」
安田 よく誤解されるところですね。僕はもともと物産展好きからのスタート。「物産展」というジャンルのひとつとして、京王駅弁大会も押さえていたんです。当時は会期中、3~4回は足を運んでいたから、自分でもそれなりに“京王駅弁大会好き”の自負はあった。
茂木 今のようなスタイルでチラシ飲みをするようになったのは2005年頃からかな。それまでは行きつけのバーでよく、ひとりで駅弁大会のチラシを肴に飲んでいた。いちいちチラシを持ち歩くのも面倒だから、店に一枚置いてもらってね。
安田 その話を初めて聞いたときは「負けた!」と思いましたよ(笑)
京王駅弁大会をこよなく愛する大会派の人々。事情が許す限り、会期中はほぼ毎日足を運ぶというが、その“愛し方”は人によって著しく異なる。
茂木 まず、出勤前に立ち寄って駅弁を買い、会社帰りにまた寄って今度は夕飯用の駅弁を買うのが基本ですね。平日の夕方は意外と人気弁当を並ばずに買えたりするので狙い目。編集者という仕事柄、比較的時間の融通がきくのと、通勤途中に新宿を通るのが大きい。通うというより、寄り道する感覚。もし開催地が上野や池袋だとしたら、申し訳ないけど、ここまでは通わないだろうね。
安田 僕も会期中はほぼ毎日通います。駅弁大会のチラシはEvernoteで管理。「“カニ対決”が開催されたのは何年だっけ?」といったときに、すぐチェックできるのでホント便利!
とみさわ 俺は掛紙派。例年だと、「牛肉どまん中」(山形県)は買わないんだけど、今年は買いますよ。「花の慶次」(原哲男作)のイラスト掛紙バージョンだから買っておかないと。
茂木 「牛肉どまん中」は確実に1回は食べるから、掛紙あげるよ。
とみさわ え? ホントに!? それでもいいな。
茂木 誰だか忘れちゃったけど、「有田焼カレー」(佐賀県)が出たときに「あそこにあるんですよね……」って言いながらじっとゴミ箱を見ているヤツがいたよ。
安田 <掛紙派>はともかく、<器派>はさすがにゴミ箱漁れないでしょう。
桜田 できないですね。
とみさわ あの器ならゴミ箱漁るのもアリだな。
一同 ええ!?
安田 器といえば、今年は「ゲゲゲの鬼太郎 風呂茶漬け」(鳥取県)は出ないんですかね。
あの小ドンブリ、すごく使いやすいんだけど。
とみさわ 去年、あれだけゲゲゲブームだったのに今年出さない手はないよね。でも、チラシの次週予告欄(※)にも載ってない。
茂木 載っていないだけで出ると思うよ。ただ、去年ゲゲゲが出ていたブースに今年は「伊勢海老弁当」(静岡県)がいるから、場所がちょっと入れ替わるのかもしれない。
※京王駅弁大会のチラシは前半用のA版、後半用のB版と2パターンある。A版のチラシにはB版で登場する駅弁や名産品が「次週予告」として登場。今年、A版のチラシでは「ゲゲゲの鬼太郎 風呂茶漬け」は掲載されていなかった。しかし、茂木さんの推測通り、B版(1/20~)で登場。場所が変更になるのでは……という予想もビンゴ! だった。
各駅弁の行列予想に、内容の推理、チラシのレイアウトのよしあし、題字の色味に至るまで<チラシ飲み>の話題は尽きない。最後に“大会派”のみなさんに「今年おすすめの駅弁」を聞いてみた。
茂木 くどいようだけど、僕らは駅弁が好きなわけじゃないですからね。
安田 そうそう。あくまでも「京王駅弁大会」のファンなんです。
茂木 それぞれのスタイルがあるけど、しいておすすめをあげるとすれば「瀬戸内鯛寿司」(兵庫県)かな。一見、地味だけどおいしい。
とみさわ 「ますのすし」も旨いけど、ひとりで食べるにはちょっと多いんだよな。みんなで食べたい。
茂木 器狙いでいくなら、「有田焼カレー」(佐賀県)は外せない。筑前煮などを入れるのにちょうどいいサイズで使い勝手がいい。あとは「ひっぱりだこ飯」(兵庫県)もペン立てにぴったり。
桜田 「海鮮上ずし百万石」(石川県)も気になります。現物を確認してみないとわからないけど、チラシで見る限りでは、上品でしっかりした器っぽい。
茂木 「いわて短角牛弁当」(岩手県)も食べておくべきですよ。ホントに旨い。
安田 でも、駅弁じゃなくて「全国うまいもの」枠ですよね。駅弁数にカウントできない……。
茂木 しなくていいじゃん!
安田 いや、俺も数を競うのはやめようと思っているんだけどね。でも、ひとつ食べたら、他の駅弁食べられなくなるし……。
茂木 あのさ、一度でいいから「食べない駅弁大会」を経験したほうがいい気がするよ。行くだけ。ここまできたら、もう駅弁を食べる必要ないでしょう。
安田 いや、あるよ!
とみさわ 京王駅弁大会に通うけど、食べないって前衛だね。
茂木 そりゃ、行くからには買いたいよ。買ったからには食べたいよ。でも、あえて行くだけ。
桜田 うちもそんな感じかも。「会場には行くけど、見るだけ」という日、結構あります。
安田 確かに。
茂木 駅弁は旨くなくたっていいんですよ!
とみさわ 弁当を一生懸命作っている人が聞いたら、度肝を抜かれますよ(笑)。まあ、<掛紙派>の俺としては、弁当の中身は入ってなくていい。
桜田 わたしも<器派>なので、容器だけでいいですね。
茂木 え? 中身がいらないというところまでは考えてなかった(笑)
深淵なるマニアの世界。京王駅弁大会は、駅弁好き&鉄道ファンだけの祭典にあらず。新宿駅を通る機会があったらのぞいてみない手はない! また、25日深夜には安田理央さんの「駅弁大会UST」が配信予定。こちらもお楽しみに!(島影真奈美)
おまけ/とみさわ昭仁の「京王駅弁大会」初日雑感
エキサイトレビューで「京王駅弁大会」のことを採り上げない手はないだろう、って思ったんだけど、自分では絶対冷静に書けない気がしたので、シマカゲさんにお願いしちゃった。とにかく、世間的には(というか京王的には)13日から始まった大会だけど、おれたち“大会派”にとっては、年が明けて京王百貨店でチラシを配布し始めたときからすでに戦いは始まっていたのだ。新年早々チラシをもらってきて、夜な夜な酒場でチラシを肴に酒を飲みつつ、やがて始まるであろう大会に思いを馳せる。最高のひとときだ。もしかしたら、おれたちにとって毎年チラシさえ配布してくれたら、実は駅弁大会すら開催されなくていいのかもしれないな……。何を言ってるんだろうかおれは。
「安田理央のB級グルメ道」