いや、相変わらずおもしろいですね。

昨年秋にiPhoneアプリでリリースされ、大人気となった「ゲーム発展国++」
ゲーム会社を経営するシミュレーションゲームで、僕も思わずハマってしまい、レビューまで書いてしまいました。しかもこれ、日本以上に海外版が大ブレイク。顛末は前回書いた通りですが、地球は狭いってことを改めて痛感させられますね。

そんなカイロソフトがリリースした新作アプリが「ゆけむり温泉郷」。「ゲーム発展国++」と同じく、もともとケータイ向けにリリースされたタイトルのiPhone移植版です。それだけにベースの面白さは保証付き。そこにiPhoneならではのタッチ操作や、大画面のグラフィックが加わって、よりパワーアップした内容になっています。

ゲームは温泉経営シミュレーション。経営者として温泉旅館を育て上げ、旅行ガイド全国一位をめざすのが目的です。画面上をちまちま動くキャラクターをはじめ、ドット絵ならではのあたたかさは本作でも健在。基本フォーマットは「ゲーム発展国++」と同じなんですが、本作ならではの魅力や特徴も見て取れます。

ま、そんなことより、さっそくゲームを始めてみましょう。
旅館の名前をつけたら経営開始。旅館組合から派遣された頼もしい助っ人、温泉みなこさんの説明に従って、部屋やお店の拡張をしていきます。浴室も男湯しかないので、ちゃんと女湯を設置しましょう。忘れちゃいけないのが庭石や松の木といった景観への配慮。ただし部屋の一角は廊下に接している必要があるので、気をつけてくださいね。

こんな風に施設を拡張していくと、どんどん宿泊客が増えて、旅館の人気も高まっていきます。半年ごとに発行されるガイドブックでは、お客さんの投票で順位が決まり、高順位をとると、賞金もゲット。旅館が大きくなるにつれて、和室だけでなく洋室も設置できるようになったり、浴室の種類に大浴場や露天風呂が加わったりと、選択の幅がどんどん広がっていきます。いやー、セオリー通りって感じです。きっちりプレイヤーをハメてくれますよ。

集客を高める上で、もう一つ重要なのが街への投資。旅館をいくら拡張しても、温泉街がショボければ客足は伸びません。
そこで図書館や植物園を誘致したり、中小企業を支援したり、山小屋や漁場を開発したりと、あの手この手で地域の活性化に努めていきます。温泉旅館と温泉街は一蓮托生。ケチらずにドカーンと投資していきましょう。

ところが、だんだん思うように収益が上がらなくなってくるんですよ。そこでメニューから経営状態や施設一覧をチェックしたり、画面をタッチして部屋ごとの宿泊履歴を確認してください。すると施設の回転率に大きなバラツキがあることに気づくはずです。ザックリいって、部屋の景色が良いと人気が高まり、宿泊率が上がる仕組み。部屋やお店ごとの相性もあるので、配置にも気をつけてください。人気の低い部屋は思い切って撤去し、中庭にしても良いかもしれませんね。大切なのは「おもてなしの心」です。

「ゲーム発展国++」が新作ゲームの企画・開発・販売を繰り返しながら進むのに対して、「ゆけむり温泉郷」はもうちょっとまったりしています。ある程度施設を拡張したら、部屋の回転率やお客さんの満足度などをチェックしながら、ちょこちょこ手を加えていく感じ。
いわば盆栽を育てるようなイメージです。でも、それだけに止め時を失っちゃうんですよね。気がつけばiPhoneがバッテリー切れ、なんてのも誇張じゃありません。

ちなみにゲームは16年目でエンディングとなり、その時点での資金とポイントがハイスコアとして集計されます。その頃には小さかった温泉旅館も、廊下と施設が縦横無尽に広がり、スーパー銭湯も真っ青の一大旅館に成長しているかも。その後もゲームは続けられますし、再プレイ時にはパラメータの一部が引き継がれるので、どちらを選ぶかはお好み次第です。

んでもって個人的には、海外版の発売も期待したいんですよね。実は冒頭にも述べたように、前作「ゲーム発展国++」の海外版「Game Dev Story」は海外での評判が非常に高く、今年度の「ゲームデベロッパーズチョイスアワード」携帯ゲーム部門にノミネートされたほど。これ、海外ゲームクリエイターの投票をベースに選出されるもので、ゲーム版アカデミー賞といわれるほど権威がある賞なんです。

ま、温泉旅館という概念自体がローカライズ不可能という話もありますが、そこはそれ、ゲームを通して日本文化を輸出しちゃう勢いで。ぜひまた、全世界に旋風を巻き起こして欲しいですね。(小野憲史)
編集部おすすめ