“黄金のクラシックシリーズ”として、ジョン・ケープルズ著『ザ・コピーライティング』に続く、新たな書籍『伝説のコピーライティング実践バイブル―史上最も売れる言葉を生み出した男の成功事例269』が発売された。
去る3月25日に大手書店で行われた、本書の監訳者であり、ベストセラー作家の神田昌典氏の講演会には、震災後にもかかわらず、全国から約400名が参加。
税込5040円もする本書のサイン本が100冊完売。Amazonでも、発売以来、ずっと売れ続けている。

「この本の原書に8万円をはたいて、むさぼり読んだ」――本書の「カバーオビ」に書かれていた神田昌典氏(@masanorikanda)の言葉にクギづけになった。

本書の原書の発売は1937年というから、74年前に書かれたものだ。
著者は米国のダイレクトマーケティングを築いてきた伝説のコピーライター、ロバート・コリアー氏(1885~1950)。内容が色あせることなく、米国のマーケッターの間で70年以上もの間、読み継がれてきたこの原書。
廃版となっては本や“バインダー”という形で出版を繰り返し、今まで日本で翻訳されてこなかった原書がこのたびついに日本語訳で刊行された。まさに伝説の書だ。

26章立てのコピーライティングの実践ノウハウ集で、269もの成功事例が収録。通常出回っている200ページ前後のビジネス書と比べて3冊分以上の716というページ数を見ても、タイトルにある「バイブル」はけっして大げさではない。

「前作の『ザ・コピーライティング』が“理論編”だとすれば、本書が“実践編”としての位置付けとして考えていただければ」とダイヤモンド社・編集担当の寺田庸二さん(@yoji_terada)。

「テストと効果測定の積み重ねにより『冷静沈着に分析を行う科学的な手法』を提唱していたジョン・ケープルズ氏の『ザ・コピーライティング』に比べ、『伝説のコピーライティング実践バイブル』は、コリアー氏の人生をそのままうつしだした事例の宝庫となっています」

でも、どうして“今”発売されたのだろうか?
「原書が刊行されたのは、自動車の技術革新で都市部へと人々が集中していった時代。
そういった過程で人間関係が希薄化していくなか、コリアー氏は、 “信頼関係”を核として、コピーを通して人々とのつながりをつくっていきました。そんな時代と重なるところがあるソーシャルメディア全盛の今に、人々の心に語りかける“呼びかけの作法”としてのコピーの指南書が必要とされているのではと、神田さんと共通認識をもち、現代に蘇らせようと思いました」と寺田さん。

ただ、本書は言葉のレトリックのみを紹介した本ではない。本書でも「言いまわしは重要ではない。効果があったレターを裏づけているアイデアにどう手に入れるかが重要なのだ」と書かれているとおり、「コピーをそのままマネするというよりは、言葉の裏側に隠されているアイデアを発想するヒント集として活用してもらえれば」と寺田さん。

本書はコリアー氏の実体験ストーリーも時系列で紹介されている。
実際に売り込んでいき、自らの体験の中から、アイデアのヒントを見つけていく過程、法則を編み出していく姿が描かれている。とはいえ、当てずっぽうで行っているのではなく、効果実証済の分析に基づいていて、最終的に、科学的根拠を最重視していたケープルズ氏の考えとつながっているところが驚きだった。また、アイデアのヒントや気づきのあるフレーズもいっぱい出てくる。

「原書が出たのは、1937年。原書のなかで描かれているのは、1910~30年代の第一次世界大戦前後から、20年代の米国の黄金期、そして29年からの世界大恐慌、軍国主義へと移行していくまさに動乱期。そのような時代を生きてきたコリアー氏の、『常に変化すること』を求め、一回の成功でよしとするのではなく、『今日学んだことを明日は忘れなければならない(→本書p444)』といった姿勢から、前向きでたくましい生き様や人間性の魅力も感じてもらえるのでは」

「すでに70年以上語り継がれてきた原書。
本書も、読者の方にとって一生ものの財産としてだけでなく、孫の世代、さらには孫の孫の世代まで伝わる本になってほしい」と寺田氏。

値段は税込5040円だが、このボリュームと内容の濃さを考えて、けっして高くないと思う。必要に感じている人が必ず読んでほしい一冊です。
(岩田大祐)