普段私たちが口にしている野菜が、どんな種から作られているか知っていますか?

スーパーに行けば、同じ形、色、大きさの野菜がズラリと並んでいる。人間なら、身長も体重も顔立ちも人によって違うのに、スーパーの野菜にそういう個性はあまり見られない。
なぜか?

実は、スーパーなどで売られている野菜は、大量生産に適するように人為的な交配によって作られたF1種という品種が主流だから。最近では、雄性不稔(ゆうせいふねん ※おしべがなかったり、花粉がなかったりする)によるF1種も増えており、今や多くの農家にとって、種は採るものではなく、毎年購入するものになっている。

昔は、種は作物から採るのが当たり前だった。今でもそうした種はある。その地域で長年栽培され、その気候・風土に適応してきた京野菜のような伝統野菜だ。それらは在来種・固定種と呼ばれるが、残念ながら多くは衰退や絶滅の危機にある。

もちろん、F1種がここまで普及したのは、需要やメリットがあったから。しかし、本来、種とは次の世代に継がれていく大切な情報がたくさん詰まった「いのち」そのもの。その実や種を食べている私たち人間もまた種であり、種を育み、種をまくという行為そのものが、暮らしであり、生きることであり、自然の一部となって循環していく――。そんな考えから生まれたのが、在来種・固定種・自家栽培の種から育てた野菜を専門に取り扱う「terranova」(テラノバ)。元パタゴニア日本支社長でもあり、社会企業家のジョン・ムーア社長率いるジョン・ムーア アソシエイツ株式会社が先ごろ立ちあげたブランドだ。

「terranova」とは新しい大地の意味。
次の世代が立つ新しい大地のために、まずは種から食べ物のあるべき姿を考え、行動へ結びつけることを提案していくという。具体的な活動としては、日本全国の在来種・固定種・自家採種の種から育った野菜を詰め合わせた「terranova box」(1箱3,500円/月1回)の定期配送サービスを6月よりスタート。これにより、在来種、固定種、自家採取をおこなう農家や食の多様性の支援につなげていきたいという。
ほかに、「オーガニック・アドバンスト コース」「100%オーガニックフードを自分で育てる」「種と日本の食文化」という3種のワークショップも6月から開講予定。 いずれも現在予約受付中だ。

4月に催されたブランドのオープニングイベントで、ジョン・ムーア氏は、
「本当の安全とは何か、本当の食べ物とは何か、本当の人生とは何か」
とゲストに問いかけた。今こそまさに、生きることの根幹を考えなければならないタイミングといえるだろう。同氏はまた、
「考えるだけ、口だけ、では意味がない。大切なのはアクション。そこから変化が始まります」
とも強調する。

本物の種、本物の食べ物、そして本物の未来へ。食べ物の価値やライフスタイルの在り方が問われる今だからこそ、注目したい新ブランドです。

(古屋江美子)
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