大枠をつかむために、まず訪ねたのがイスタンブールの旅行会社「オーバーシーズ・トラベル・エージェンシー」。そこでトルコワインの概要をうかがった。
「主な生産地はトルコ南西部に多く、イズミル、シリンジ、デニズリ、カッパドキアなど。ケバブに代表される肉料理が中心のため、どちらかと言えば赤が多く飲まれます。古くからの銘柄だと、アンカラ産のカヴァクリデレ(赤)。一方で沿岸部は魚料理も豊富で、白も有名。シャルドネ種から造られたイズミル産のサラフィン(白:1999年)は2001年のフランス『国際ワインチャレンジ(Challenge International du Vin)』で銀賞を獲得しました」
そもそも、首都アンカラのあるトルコ中部アナトリア地方は、古くからワイン醸造がおこなわれていた地域。紀元前2000年頃のヒッタイト帝国時代には、すでにワインが飲まれていたという。また土産物として有名なものに、かつてヒッタイト軍が本拠地を置いたカッパドキアのワインがある。イスタンブールからバスで約12時間。現地のワイン専門店に足を運び、詳細を聞いてみた。
「カッパドキアに広がる岩窟住居群は、かつて迫害されたキリスト教徒が隠れ住んだ場所。それら岩窟内は年間を通して温度が一定に保たれ、ワインの貯蔵に適しています。カッパドキアにはワイナリーが数社あり、そのなかでもっとも知られているものがトラサンというメーカーのワインです」
試飲してみると、トラサンのワインは暑い風土を反映して、赤は力強いタンニンが印象的。白は少し甘めで軽やかなものが多かった。
そもそも、トルコワインの転換期を作ったのは近代国家の礎を築いた建国の父、ケマル・アタテュルク。1923年に革命を経てトルコ共和国を樹立した彼は、1925年に国内に国営ワイン醸造所を設立した。以後、トルコワインは国営企業を中心に現在まで発展している。
特に近年はワインブームが続いているトルコ。ヨーロッパなどで栽培されている代表的なブドウ品種に加え、古来使われてきたトルコ特有の品種もあり、新たな味にも出合える。日本国内でもトルコワインを扱っているところがあるので、気になったら独自の味を探してみよう。
(加藤亨延)