フェイスブックなどを通じて告知が行われるが、年々参加者が増え続けるという理由は、見た目はグロテスクだが参加者本人がゾンビになりきり楽しんでいて、見ている人も来年は参加してもいいかもと思える何だか笑えるイベントだからだろう。
バンクーバーは第2のハリウッドともいわれ映画産業が盛んなこともあり、映画に携わる人が多いということもあるかもしれないが、子どもの頃からハロウィンなどで仮装はお手のものというカナダ人とはいえ、「素人がそこまでするか?」というような凝り具合のゾンビばかり。ワックスを顔に塗って傷を作り、緑色や赤色の色をのせてゾンビメイクを作っていくのだが、意外とリアルなメイクの人でも自分でチャレンジしたという人が多くて驚いた。
数千人のゾンビが街を一斉に歩く姿を目のあたりにし、本当に「ゾンビタウン」にいるような錯覚さえ覚えたのは、メイクや衣装もさることながら、「グォォォォ~」「シュゥゥ~」などといううめき声をあげ、映画などでよく見る足元がおぼつかないジェスチャーで見物人を驚かせるなど、演技もばっちりだからだ。「やるならトコトンやる」という本気モードの姿勢が、臨場感を与え、参加しないで歩いているほうが何だかしらけているようで恥ずかしく思えたほど。
妊婦さんは、もうすぐ生まれそうなお腹に赤ちゃんが外に突き出してしまったような恐怖のメイクを施し、人を食べて口から血をダラダラ流すスタイルで注目を集めていたゾンビのお兄さんは、話すととても良い人で「血に見えるのはチョコレートで甘いんだよ」と教えてくれた。写真を撮らせてもらうと、頼んでもいないのにゾンビになりきりポージングしてくれる人ばかり。どんなことがあっても素に戻らず、ゾンビ同士喧嘩を始めたり、終始、ゾンビを貫くプロフェッショナル振りには感心するばかり。今まではゾンビ映画を見ると何だか夢に出てきそうであまり見たくはなかったが、次からは意外とメイクの繊細さや技術のすごさに注目して見られるかもしれない。
それにしても、イベントが終了して、そのままの姿でバーなどで飲む人らがいたり、夜更けに電車に乗っていたり。これなら本物のゾンビが街に紛れ込んでいても、気づかないはず……。
(山下敦子)