地中海沿いにある北アフリカの国チュニジア。国民の大部分はイスラム教を信仰しているが、そんな同国で国民銘柄ともいえるビールがあるという。
名前は「セルティア」。一体どんなビールなのか。

製造元はSFBT(Societe Frigorifique et Brasserie de Tunis)社。フランス保護領下の1889年に創業し、1979年に民営化した。ビールをはじめミネラルウォーターや炭酸飲料を製造し、現在、農産物加工業では同国首位、民間企業としては第4位の規模を持つ。1925年に誕生した銘柄セルティアの他に、ドイツのベックスやレーベンブロイなど国外ブランドのビールをライセンス生産している。
2007年、首都チュニスの南東にハイネケン(既出コネタ:できたてハイネケンを五感で楽しめる場所)のグロンバリア工場が稼働するまで独占状態だった。

ビールの種類としてはラガー。アルコール度数は5度。イスラム教国らしく、ノンアルコールのセルティアも製造している。味は南国のビールなので軽いものを想像していたのだが、意外にしっかりしている。コクがあるモルト特有の風味が印象的だ。
その軽すぎず重すぎないバランスは、羊肉を中心に対岸のイタリアや地中海沿岸のギリシア、トルコ料理などの影響を受けた同国の味付けを上手く引き立ててくれる。

チュニジアは飲酒可能とはいっても本来はイスラム教国。どこでも購入できるわけではない。取り扱えるのはライセンスを所持する商店・レストランなどで、公の場で堂々と飲むことは憚られる。

例えば、スーパーマーケットではアルコールが陳列されているスペースに別途入口が設置されていたり、レストランでもアルコールを扱う店は外から店内が見えないように配慮されている。日の出から日没まで断食をおこなうラマダン月間中は、一部高級レストランでは可能だが、原則商店でのアルコールの購入はできない。
またイスラム教で休日にあたる金曜も、商店でのアルコール販売は基本的におこなわれない。

日本では、この地方の代表食であるクスクスなど北アフリカ料理を扱うレストランに行けば、このセルティアを置いている場合もある。話の種にイスラム教国で生まれたビールをぜひ一度ご賞味あれ。
(加藤亨延)