旅館にいくと、普段は見かけないシャンプーやボディーソープが置いてあることがある。見慣れないシャンプーをおそるおそる使ってみたら、意外と使い心地がよく、帰りがけに売店で思わず買ってしまう、あれである。


この、「旅館にしか売っていないシャンプー」には、大きく分けて2種類ある。ひとつは、例えばアズマ商事が販売する「馬油シリーズ」のような、旅館やホテル向けシャンプーを、その旅館が購入しているケース。そしてもうひとつは、その旅館が独自に開発しているケースである。

最近は、旅行の時にマイシャンプーを持参するという人も多く、旅先でのヘアケアが声高に叫ばれているようなのだが、旅館オリジナルなシャンプーは、誰が、どういう風に開発しているのだろうか?

色々と調べてみたところ、 京都にある中野製薬(株)という会社が旅館やホテル向けのオリジナルシャンプーを開発していることを知り、問い合わせてみた。

中野製薬(株)によると、「弊社は、美容師向けにヘアケアなどの頭髪化粧品を製造販売する会社ですが、最近では美容師さんが認めた処方を活かし、他業界からの要望にもお応えした商品開発も手がけています」とのこと。ひとつの製品を開発するのに、「数百種類のサンプルを試作することもあります」なのだそう。

美容室で販売されている中野製薬の商品を、旅館関係者が使う機会があり、そこから、旅館オリジナルシャンプーの開発依頼が来るようなこともあるらしい。例えば、京都の旅館「柊家」のオリジナルシャンプーはそんなきっかけで開発がはじまったそうである。

柊家旅館は、200年近く続く老舗旅館なのだが、「柊家に宿泊するお客様は、歴史や趣きを感じるお部屋と同じくらい、お風呂に対する期待が高いそうでして、それに見合った、品質にこだわったシャンプーを開発してほしいという依頼をいただきました(河林氏)」なのだそう。

開発方針としては、「旅館名として掲げられている『柊』のイメージで、和の空間に合う香りを追求し、洗い上がりのさっぱり感と仕上がりの手触り感にこだわりました」とのことで、その旅館ならではの独自性と、ヘアケア製品としての品質を両立させる難しさを彷彿とさせる要件である。

できあがったシャンプーとトリートメントは、当初は旅館の浴室で使用することを目的としていたが、宿泊者から「購入したい」という声が多くあり、近々、お土産、ホームケア用として商品されるそうである。

こんな風に開発される旅館オリジナルシャンプーなのだが、「最近のヘアケアは、スキャルプケアやノンシリコーンシャンプー(コーティング剤にシリコンを使っていないシャンプー)が注目されています」とのこと。


また、首都圏の有名なホテルなどでもオリジナルシャンプーの採用は進んでおり、中には海外ブランドを前面に押し出したラグジュアリーな感じのオリジナルシャンプーもあるらしい。

新しい物好きな筆者としては、宿泊のたびにいろいろなシャンプーを試せるのは嬉しいわけだが、マイシャンプー持参派としては、使い慣れたシャンプーを使うか、オリジナルシャンプーを使うか、悩みがつきない昨今なのである。
(エクソシスト太郎)
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