今晩の「金曜ロードSHOW!」で「風の谷のナウシカ」が放映されます。
1984年放映のアニメ映画。
セリフを覚えている方も多いのではないでしょうか。
逆に安田成美がイメージソングを歌っていたことを知らない若い人たちも多いかもね。
あと「ナウシカ」はジブリ作品じゃないからね! トップクラフト(ジブリの前身)制作、徳間+博報堂の製作委員会で作られているから「好きなジブリ作品はナウシカ(ドヤ)」って言っちゃうと恥ずかしいぞ!
今回のテレビ放映では、スピンオフ短編『巨神兵東京に現わる』のワンカットも流れますのでお見逃しなく。
腐ってやがらない早過ぎない巨神兵ですよ。
 
ところで、ナウシカが使っていた武器、ちょっと特殊だったの覚えてますか?
彼女やその他の兵が使っている刃物、あれ硬化セラミック刀なんですよね。兵隊の甲冑もセラミック。
でも、今セラミックス包丁って……普通に売ってるよね?
よし、ではセラミックス包丁を実際に使ってみましょう!

まずはナウシカ世界のおさらい。
「風の谷のナウシカ」はSF的側面を持った作品です。マンガ連載のはじまった1980年代当時は、非常に便利で硬い物質としてセラミックス開発と販売が進んでいた頃。
面白いのは、セラミックを鉱山から切り出していたということです。
「えー!?」って感じですが、ようはロストテクノロジーなんですよ。
「火の7日間」以前は宇宙に行ったりもするくらい科学は進んでいたのに、今は生きるのに精一杯なので、埋まっているセラミックスを掘り出してひっぺがして、削って加工しているのです。


ちなみにアニメ版のナウシカの世界での強さ順列でいうとこうなります。
王蟲や蟲たちの殻 > 硬化セラミック > 鉄
最高度に硬い上に弾力性もある、と完璧な装甲を誇るのは、王蟲の殻。
王蟲は何もかもを紙っぺらのように壊していきますが、それは人間ではそう簡単に破壊できないセラミックス製なんです。
怖いね。
 
セラミックスの利点は2つ。軽いこと、そしてとてつもなく硬いこと。
兵隊の鎧も、現存する鉄の甲冑と比較にならないくらい軽いはず。
実はナウシカのかぶっている飛行帽も、セラミックスの衝角がぬいこまれ、補強されています。
それだけ、邪魔にならず、かつ身を守るのに便利なんです。
あまりの便利さに、1980年代当時は「セラミック文明本当に来るんじゃないか」と思いましたよ。

しかし欠点もあります。まずは欠けたらもう戻らないこと。

ナウシカが王蟲の抜け殻を見つけて切り取ろうとするシーンがありますが、王蟲の殻のほうが硬いのでセラミック刀が欠けちゃうんです。王蟲の殻の勝ち!
子供が持って歩けるあたり、王蟲の殻のほうが更に軽くて硬く、非常に重宝されているのも伺えます。
ナウシカの家にある武器やユパ様のナイフは、セラミックス装甲を貫く王蟲の殻製。宮崎駿メモによると、こちらのほうが弾性があるとのこと。

もう一つはひたすら硬いので、壊れやすいということ。
金属はしなやかに曲がるので、凹んだりはするものの壊れはしない。けれどもセラミックス刀の場合は「硬すぎるので」ポッキリ折れてしまうのです。
そう考えると、鉄鎧は銃弾で撃たれた場合ボコボコにはなるけれども、トルメキア兵のセラミックス鎧は強固すぎる分、割れたらパックリいってしまいまそうですね。
だからクシャナ殿下の鎧は修復が簡単なスケイルメイル(うろこ状)になっていると考えると合理的です。

これらを考慮した上で、実際に売っているセラミックス包丁はどうか見てみます。
セラミックス包丁自体は1985年(ナウシカ上映の次の年!)から売ってますが、ここ最近また急激に売上を伸ばしています。
有名なのは京セラ セラミックナイフ

現時点のアマゾン価格3345円。安いですね。
一番重要なのはこのように「価格が安くなった」ということ。
そしてもう一つの利点、きれいであたたかみがあるからというのも大きなポイント。
非常にお洒落でかわいらしいデザインの包丁やナイフが作れるようになり、台所が華やかになります。
また、手入れがとても楽。鉄ではないので酸やアルカリにもまけず、レモンを切るのも平気です。また食器洗い機にぶち込んでおいてもOK。

では使い心地はどうでしょう。
まず、切れ味は抜群です。さすがに斬鉄剣みたいになんでも切れるわけじゃありませんが、野菜はサクサクと切れます。特に効果を発揮するのはほうれん草やキャベツのような葉物の野菜類。

非常に鋭いため、お肉や魚にも適しています。最近のものはキレイに洗えば特に刃に色移りしなくなってきています。
加えて、なんといっても軽い
お料理で包丁を使うのは重労働です。千切りやスライスとか大変ですからね。

近年ブームなのが、セラミックスのピーラースライサー
「硬くて鋭い」という利点を活かすのにはもってこいです。
さらに便利品として、紙をはじめ、野菜や肉まで、なんでもサクサク切れるセラミックはさみも人気商品。
うーん。パッと見どれも金属感がないのですが、スパっと切れるから面白い。

じゃあもう全部セラミックス包丁でいいんじゃね? となるかもしれませんが、違う!
セラミックスは脆性破壊が非常に起きやすいです。ぶっちゃけ簡単に折れます。

一番折れやすいのは、床に真横に落とした時。エキレビの編集者の証言によると「簡単にぱっきり割れたよ!」とのことです。鉄だとこうはならない。硬すぎるがゆえの弊害ですね。
もう一つは簡単に研げない。
専門の器具を使っての研磨は可能だそうですが、欠けてしまった場合は修復はまず不可能です。きちんと使えばその分刃が丸くならないので長く使えるのですが、恒久的に使えるものではなく消耗品だと割り切る必要はあります。
そして、かぼちゃなど硬いものには向かない。本体が軽いため力を伝えづらいというのと、鋭く硬すぎるがゆえに力をかけると欠けてしまうからです。ここは重くて柔軟性のある鉄やステンレスが有利。

利点と欠点並べてみましたが、最近は技術も進み値段も安くなってきております。
野菜専用、と割りきって一つ買って並べるだけでも台所が華やかになるのが最大の魅力でしょう。

また、セラミックスに混ぜ物をすることで「硬くて柔らかい」を実現する研究も行われています。
セラミックスの硬さと鉄の柔軟性をもった包丁が今後出てくるかも!?
あとは、なんといってもナウシカと同じ物を使っているという楽しさがありますよ!

こうなってくると、欲が出てきますね。
王蟲の軽くて硬い殻をつかったらさぞかし便利な包丁ができるに違いな……あっ、王蟲の目が真っ赤に染まって怒っている! 
ごめんなさい許してください!
(たまごまご)
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