世界的に注目を集める中国だが、注目を集めすぎた結果、こまった事態がひとつ、起こっていた。
国際化が進む首都、北京において、英語メニューを用意する中華料理店が日に日に増えていたのだが、外国人にとっては、なんのことやらよく分からない英訳になっていたところが多かったようなのだ。
一例をあげると、「麻婆豆腐」の英語名が、「Tofu made by woman with freckles(そばかすのある女性が作った豆腐)」。気持ちは分かるが、ちょっと注文する気になれない。
この話、笑い話のように聞こえるが、例えば日本においても、「大根と水菜のハリハリサラダ」や「びっくりフライドポテト」などのメニューを外国人に説明するとき、なんと英訳したらよいのだろうか。同じ漢字文化を持つ日本としては、意外と、人ごとではない。
そんな状況の中、北京市はこのたび、「美食翻訳中国語メニュー英文訳法(美食訳苑 中文菜単英文訳法)」なる本を発行し、英訳の統一に向けて本格的に動き出した。この本を元に、中華料理における 「正しい」英語メニューを紹介してみたい。
ちなみに、「美食翻訳中国語メニュー英文訳法」は、文末に掲載する北京市のホームページからダウンロード可能なのだが、中国4000年の歴史を一冊の本にまとめただけあり、そのファイルサイズはおよそ600メガバイトであり、閲覧するためにはちょっとしたOSのアップデートよりも時間がかかるため、ご注意いただきたい。
まず、この本の冒頭に述べられている、英訳方法の基本は以下のようなものである。
1.メインとなる食材に、配合されている食材、またはソースを書き添える。例えば、松の実にシイタケを意味する料理であれば、「Chinese Mushrooms with Pine Nuts」。
2.調理方法に、食材を書き添える。例えば、豌豆辣牛肉(豌豆はエンドウ豆、辣は辛い)であれば、「Sauteed Spicy Beef and Green Peas」。
3.形や食感に、食材を書き添える。例えば、脆皮鶏(皮がぱりっとしたニワトリ、見たいな意味)であれば、「Crispy Chicken」。
4.人名や地名に、食材を書き添える。例えば、四川辣子鶏であれば、「Spicy Chicken, Sichuan Style(Sichuanとは四川の意味)」。
5.中国での呼び名を、ピンイン「アルファベットでの発音表記法」で表する。餃子であれば「Jiaozi」、ワンタンであれば、「Wonton」など。
1、2、3については、割と普通な感じの名称であり、日本でいえば、うどん屋における「天ぷらうどん」、居酒屋における「たこわさ」、および、ガストにおける「ミラノ風ドリア」などがこれらに該当するものと思われる。
4は、中国の地名などが入っている点で多少ゴージャスであり、日本でいえば、「奈良漬け」「土佐煮」「札幌一番みそラーメン」などがこれらに該当するだろう。
5は、中華料理のネイティブ発音がそのまま英語名になったようなものであり、中華料理の中でも特に知名度の高い、いわばエリート中華料理であるとも言える。日本でいえば、「寿司」「天ぷら」「日本酒(Sake)」クラスの知名度であると思われる。
こんな感じで、中華料理の名前が整理されているのだが、日本でもメジャーなあの中華料理達の英語名がいったいどんな感じなのか、調べてみた。
まず、筆者の好物の一つであるエビチリ。
次に、チンジャオロースは、「Sauteed Shredded Pork with Green Pepper(細切れ豚肉とピーマンの炒め物)」となっており、エビチリと同様、「調理方法+食材」のパターンである。間違ってはいないのだが、なんだか、淡白な印象だ。
杏仁豆腐はどうだろうか。これはさすがに、「An-nin Tofu」みたいな感じで、ネイティブ発音でも通用するのではないだろうか。と思って調べてみたところ、「Tofu with Chilled Almond and Fresh Fruits(豆腐のアーモンドとフルーツ添え)」とのこと。ちなみに杏仁豆腐は、「Almond Jelly」「Almond Pudding」「Almond Tofu」といった通称もあるみたいである。
全体的に説明的な英訳となっており、食欲を刺激するような表現とするのは難しいのかな、というのが筆者の印象であったが、やはり中華料理になじみのない人にとっては、この本のような英訳の方が、どんな料理かをイメージしやすいのかもしれない、とも思う。
いずれにせよ、「そばかすのある女性が作った豆腐」的なメニューが無くなるのは、多分良いことなのだが、常にネタを探し求める筆者としては一抹のさびしさもあるのであった。
(エクソシスト太郎)
国際化が進む首都、北京において、英語メニューを用意する中華料理店が日に日に増えていたのだが、外国人にとっては、なんのことやらよく分からない英訳になっていたところが多かったようなのだ。
一例をあげると、「麻婆豆腐」の英語名が、「Tofu made by woman with freckles(そばかすのある女性が作った豆腐)」。気持ちは分かるが、ちょっと注文する気になれない。
この話、笑い話のように聞こえるが、例えば日本においても、「大根と水菜のハリハリサラダ」や「びっくりフライドポテト」などのメニューを外国人に説明するとき、なんと英訳したらよいのだろうか。同じ漢字文化を持つ日本としては、意外と、人ごとではない。
そんな状況の中、北京市はこのたび、「美食翻訳中国語メニュー英文訳法(美食訳苑 中文菜単英文訳法)」なる本を発行し、英訳の統一に向けて本格的に動き出した。この本を元に、中華料理における 「正しい」英語メニューを紹介してみたい。
ちなみに、「美食翻訳中国語メニュー英文訳法」は、文末に掲載する北京市のホームページからダウンロード可能なのだが、中国4000年の歴史を一冊の本にまとめただけあり、そのファイルサイズはおよそ600メガバイトであり、閲覧するためにはちょっとしたOSのアップデートよりも時間がかかるため、ご注意いただきたい。
まず、この本の冒頭に述べられている、英訳方法の基本は以下のようなものである。
1.メインとなる食材に、配合されている食材、またはソースを書き添える。例えば、松の実にシイタケを意味する料理であれば、「Chinese Mushrooms with Pine Nuts」。
2.調理方法に、食材を書き添える。例えば、豌豆辣牛肉(豌豆はエンドウ豆、辣は辛い)であれば、「Sauteed Spicy Beef and Green Peas」。
3.形や食感に、食材を書き添える。例えば、脆皮鶏(皮がぱりっとしたニワトリ、見たいな意味)であれば、「Crispy Chicken」。
4.人名や地名に、食材を書き添える。例えば、四川辣子鶏であれば、「Spicy Chicken, Sichuan Style(Sichuanとは四川の意味)」。
5.中国での呼び名を、ピンイン「アルファベットでの発音表記法」で表する。餃子であれば「Jiaozi」、ワンタンであれば、「Wonton」など。
1、2、3については、割と普通な感じの名称であり、日本でいえば、うどん屋における「天ぷらうどん」、居酒屋における「たこわさ」、および、ガストにおける「ミラノ風ドリア」などがこれらに該当するものと思われる。
4は、中国の地名などが入っている点で多少ゴージャスであり、日本でいえば、「奈良漬け」「土佐煮」「札幌一番みそラーメン」などがこれらに該当するだろう。
5は、中華料理のネイティブ発音がそのまま英語名になったようなものであり、中華料理の中でも特に知名度の高い、いわばエリート中華料理であるとも言える。日本でいえば、「寿司」「天ぷら」「日本酒(Sake)」クラスの知名度であると思われる。
こんな感じで、中華料理の名前が整理されているのだが、日本でもメジャーなあの中華料理達の英語名がいったいどんな感じなのか、調べてみた。
まず、筆者の好物の一つであるエビチリ。
英語名は「Sauteed Shrimp」。エビの炒め物、という感じであり、チリソースの辛い感じが抜けてしまっているみたいなので、辛い人が苦手な人は間違って注文しないよう注意が必要である。
次に、チンジャオロースは、「Sauteed Shredded Pork with Green Pepper(細切れ豚肉とピーマンの炒め物)」となっており、エビチリと同様、「調理方法+食材」のパターンである。間違ってはいないのだが、なんだか、淡白な印象だ。
杏仁豆腐はどうだろうか。これはさすがに、「An-nin Tofu」みたいな感じで、ネイティブ発音でも通用するのではないだろうか。と思って調べてみたところ、「Tofu with Chilled Almond and Fresh Fruits(豆腐のアーモンドとフルーツ添え)」とのこと。ちなみに杏仁豆腐は、「Almond Jelly」「Almond Pudding」「Almond Tofu」といった通称もあるみたいである。
全体的に説明的な英訳となっており、食欲を刺激するような表現とするのは難しいのかな、というのが筆者の印象であったが、やはり中華料理になじみのない人にとっては、この本のような英訳の方が、どんな料理かをイメージしやすいのかもしれない、とも思う。
いずれにせよ、「そばかすのある女性が作った豆腐」的なメニューが無くなるのは、多分良いことなのだが、常にネタを探し求める筆者としては一抹のさびしさもあるのであった。
(エクソシスト太郎)
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