人生の終えんを考える「終活」がメディアでもクローズアップされている。それに伴い高齢者の不安や悩みなど終活をサポートするための身近な専門家を養成する「終活カウンセラー検定」は数カ月先まで予約が埋まるほど多くの人の関心を集めており、年内には500名のカウンセラーが誕生するという。


自分の死後、残された遺族のためにと、資産整理や相続、葬儀や遺影の撮影、お墓などについて、事前に書き記しておくエンディングノートは今だ人気が継続しているが、終活の活動は人生を有意義に生きる目的としても重要視されている。終活カウンセラー協会理事の武藤頼胡さんに話を聞いた。

――終活とは?
「終活というものを単に『終えん活動』、お墓や葬儀のことを考えるだけと思っていらっしゃった方が自分の生き方について考えるきっかけになり「終えん」を見つめ準備することで、『今』をよりよく生きるための活動です」

実際、残された家族が困らないようにと取り組み始める人もいるが、死後のことだけではなく自分の人生を見つめ直し今からの人生でやりたいことや趣味、旅行など「どう生きていきたいか」を考えることで、今まで以上に活動的になったという高齢者が増えているという。

私事ではあるが、亡き父の遺品整理時に「戒名のつけ方」の本などを発見し、生前そこには様々な思いがあったのではないかと心が痛んだ。父に「生前にちゃんとした遺影を撮影しとこうかな」と言われても「何言ってるの、そんなのまだ早いよ」と言って、家族の「死」を恐れちゃんと向き合わずにそのような話題を避けてしまった。今になって尊厳死の問題や葬儀、お墓のことはもちろん、どのように生きたいかなど、生前にどんなことでも話すべきだったと後悔している。

――今、終活に興味を持つ人が増えてきている理由は?
「以前は『死』は地域のものでしたがそれが家族のことになり夫婦のことになり、今は死の個人化という時代になってきています。おひとり様世帯も32%で自分の死後のことも
自分で考えなくてはいけない時代になったことも一因だと思います。生前準備をすることで不安が解消され、前向きに生きる気持ちになれたという方もたくさんおられます」

言われてみるとテレビなどを見ていても終活を活き活きと笑顔で活動している人が多いことに気づく。終活によって避けられがちである死に対する話題が「考えてみよう」「話したい」というように少し流れが変わってきたのではないだろうか。

――終活することの利点は?
「終活で事前に準備をして家族が一生懸命手助けしたり看病したとしても、どこまでも後悔はあると思いますが、死というものはそういうものだと思います。ただ、家族のたくさんの言葉や想い出、生きてきた証を残すことで、今後、何かで困った時にそれが指針となり自分の目指すべき方向が分かったりすると思います」

――普段から取り組める終活は?
「終活は、葬儀の準備や遺言を書くなどは別として、誰かと自分のことを話すことなども立派な終活です。
遺言書やエンディングノートを書くだけでなく、自分の生きてきた証をしっかり後世に伝えることで良き日本が創られると思います。生きてきた証とはそんなに大変なことではなく、娘に料理を教えるとか家訓を伝えるとかそういうことです」

――個人で終活を考える場合に高齢者ができること、それをサポートする家族ができることは?
「終活をするには、今までの人生をじっくり振り返ることが必要です。今の自分はどんな出来事によって形成されたのか、小学校の先生が影響しているなど色んなことがあると思います。その振り返りをすることで、『この人に会っておきたい』、『家族にありがとうと言いたい』などいろいろ浮かんできます。一人で始める場合は、過去を書けるエンディングノートを使うこと、家族がサポートする場合は昔話をじっくり聞いて引き出してあげてください」

終活カウンセラーの講義を受ける人は家族の死を経験し必要な知識として学びたいという人や、高齢者から相談されることが多い人など理由はさまざま。「終活を私たち終活カウンセラー協会だけが伝え創りあげていくことはとても難しいこと。後世のために、家族のために自分のために皆で考えていくべきことだと思います」

死は誰にでも訪れることなのに「生前に死について話すなんて縁起でもない」と「死」の話は家族であってもタブー視される風潮ではあるが、終活は本人のためだけのものではなくそれぞれが後悔をしないため、今をしっかり生きるために、普段から家族で話し合うべきテーマではないだろうか。武藤さんが言うように、それぞれが大切な思い出や考えなどを共有し合うことも終活には不可欠なことだと痛感した。
(山下敦子)
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