同博物館はセーヌ川に面した遊歩道の一角に入口がある、入場料は4.3ユーロ(約410円)。博物館自体は地下なので、地上には入館料を支払う建物だけがある。建物の横にある階段を地下へ下りると、そこが展示スペース。早速、下水特有のもわっとしたにおいが鼻腔を襲った。
当然だが奥へ進めば進むほど、においは濃くなっていく。館内では下水が横を流れていたり、下水道の上に金属製の網目のふたをして通路とし、解説版などが置かれている。ゆえに、においがダイレクトに臭覚を襲うので、落ち着いて説明を読める状況ではない。5分するかしないかで、強烈なにおいに耐えきれず頭が痛くなってしまった。リアルさは、においだけではない。
しかし、このように悪臭漂う下水も、最後は下水処理施設で浄化され、セーヌ川へ戻される。同博物館によればセーヌ川は年々魚が戻って来ており、現在29種類の魚が生息しているそうだ。種類はコイ、モトカワカマス、ギンヒラウオ、パーチ、タイリクスナモグリ、ローチ、サンドル、テンチ、ウナギなど。釣りも楽しめるそうで、館内にはセーヌ川で15kgの魚を釣り上げた人の写真も飾ってあった。
濃密な下水のにおいに包まれ、程よく鼻も曲がり慣れてきた時分になると見学コースは終了。出口近くにある土産物コーナーへ出た。ここで気になるのはオリジナルグッズ。下水道のマスコット、ネズミをテーマにしたキーホルダーやぬいぐるみなど、ネズミづくしだ。しかしネズミよりも関心を引かれてしまったのは店番をしていた職員の方。仕事とはいえこの環境の中で、一日中勤務されるのはさぞご苦労も多いはず……。
(加藤亨延)