「姿勢が悪い」「背筋を伸ばして」などと、注意された経験がある方は多いのではないだろうか。私もその一人で、たまに訪れるマッサージや整体で、必ず姿勢の悪さを指摘される。


姿勢を正そうと気を付けていても、じわじわと腰が痛くなり、結局いつもの姿勢に戻ってしまう。でも腰が痛くなるということは、正した姿勢も間違っているんじゃないか? ということで、正しい座り方を習得するべく『たった3センチで人生が変わる座り方』の著者であり、整体師でもある片平悦子先生にお話を伺った。

「座り方を変えて身体がつらくなる原因は、2つ考えられます。ひとつは、その座り方が間違っている場合。もうひとつは、腰や背中を丸め続けてきたせいで、正しい位置にセットされた骨格の動きに、身体がついていけない場合です」

では立っているときの姿勢と比べてどうなのか、さらに聞いてみた。
「立っているとき、人の姿勢はそこまで崩れることはありません。でも、座っているときは腰や背中を丸めたり、前屈みになったり、後ろに反ってみたりと、かなりひどい姿勢で長時間過ごしている方がたくさんいます。そのうちに崩れた座り姿勢がその方のクセとなり、立っていても歩いていてもそれが抜けなくなり、骨の形自体が変わってきてしまうこともあります」

正しい座り方の重要性が分かってきた。あらためて周りの人の姿勢を見てみる。職場を見渡しても、電車の中を見渡しても、本当にほとんどの人の背中が丸い。きっと私も丸いはずだ。こうなってしまう原因はどこにあるのだろう?

「ほとんどの方が肛門に体重がのった状態で座っています。
重心が肛門にかかると、骨盤が後ろに傾き、背中が丸まり、顎が前に突き出ます。これが、肩こり、腰痛、ねこ背、O脚、下腹ポッコリなど、さまざまな不調の原因となるのです」

『たった3センチで人生が変わる座り方』によると、骨盤の後ろ側に重心を置いている間違った座り方だと、骨盤を寝かした状態になっているらしい。逆に骨盤の前側に重心を置いて、骨盤を立てるのが正しい座り方だ。

でも、骨盤の前側? 骨盤を立てる? 普段意識しない部分なので、感覚が分からない……。

「正しく座れば、肛門が椅子の座面に触れることはありません。坐骨を3センチ後ろに引く、つまり坐骨の前のほうで座れば、正しい重心で座ることができます」
なるほど。ということで、本書に載っている座り方を試してみた。

椅子の前方に手をついて足に体重をかけ、坐骨を少し浮かせて後ろに引き、その腰の角度を保ちながら上体を起こす。説明が1文で終わってしまうくらいだから、簡単だろうと思ったのだが、これが意外と難しい。背中を反らしてしまい、反り腰になってしまうのだ。

「反り腰になるのは、それまで相当肛門に体重がかかる生活をしていた証拠。後ろ重心が当たり前になっているので、正しい重心がわからなくなっているのです。
それに気付くことができたのはラッキーだと思ってください。ポイントは首を前屈しても苦しくない位置まで体重を前に移動させることです」

私はデスクワーク中心の生活を10年近く続けているので、長年のクセを改善するのはなかなか難しそうだが、自分の健康のためちょっと頑張って続けてみたい。

「習慣ですから、できない自分、悪い姿勢に戻ってしまう自分を責めるのではなく、今まで無意識だったのが意識できるようになった、さあ、3ヶ月で習慣にするぞと自分をほめ、励ましてあげましょう」

片平先生のお話にあったように、正しく座れば肩こり・腰痛が治るだけでなく、O脚やねこ背が改善され、下腹部がすっきりすることもあるらしい。もしかすると、正しい姿勢を保つことが、手軽で効果的なエクササイズなのかもしれない。
(上村逸美/boox)
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