■単語にフリガナが付いている
「僕の意見では、外国語の教本にフリガナを付けるのは犯罪に近い。そのような教本で会話の勉強を最初からやらない方がいいと思う。発音のルールは例文によって覚えるのがコツです」
まず、アルファベットの発音。これはある程度参考になるが、万能ではない。なぜかというと、ドイツ語の「J」で始まる単語、例えば「Ja」(はい)は「ヤー」と発音するのに、アルファベットの中でその「J」を文字として発音したら「ヨット」と言うので、アルファベットの勉強は参考になると言っても、それで正しい発音ができるようになるとは限らない。だから、例文で覚えるのが大事。実際、ヨーロッパ人は外国語を習うとき、絶対にフリガナは使わない。
試しにフランス語をドイツ語読みしたらどうなるか。フランス語で「donnez moi mon mouchoir」(私のハンカチを私に下さい)という文章を取り上げよう。「ドネー・モア・モン・ムショアー」みたいな発音になるはずが、ドイツ語読みすると「ドネツ・モイ・モン・モウヒオイル」と読むしかない。アメリカ人だったら「ダニーズ・モイ・モン・ムチョイル」みたいな発音になり、結局どっちも正しくない発音になる。
「そんな通じない発音を避けるには、やはり最初からなるべく例文を使いながら、その外国語の発音ルールを覚えるほうがいい。
○挿話1「“Jack”は何と読む?」
昔から気になっていることとして、日本人の母音の読み方の間違い。英語の男の名前「Jack」はカタカナ英語で「ジャック」と発音する。実はこれは大間違い。フリガナを付けるなら、どうしてもっと本物に近い仮名を振らないのだろうと昔から不思議に思っていた。「Jack」の発音は「ジャック」よりも「ジェック」だから。僕は日本人や日本語を結構昔から知ってるから、「ジャック」と日本人が言っても分かるが、日本語のことを一切知らないアメリカ人だったら、その日本人の発音ではかなり困ると思う。
○挿話2「ドイツ語とフランス語が混乱」
あるテレビ番組のタイトルがこんな風に表記されていた。“Ich hasse Montage”。
「Ich hasse」というドイツ語は「私は憎む」という意味なんだけど、僕は最初、あの「Montage」はフランス語だと思って、頭の中で「モンタージュ」として思い浮かべたが、意味がさっぱり分からなかった。じゃあ、英語読みにしたらどうなるだろうと思って「モンテージ」にしても、まだ分からなかった。それじゃあ、最後にドイツ語読みにしてみたら「モーンターゲ(月曜日)」だと気づいて、やっと「月曜日が嫌い」という意味になると閃いて大笑いした。最初からドイツ語読みにすればよかったのだ。
○挿話3「クラム・チャウダー」は通じない
英語ではアサリみたいな貝を「Clam」と言い、カタカナ英語で「クレム」と発音すれば本物に近いのに、日本ではどうしてもこの英語を「クラム」と言う。そのクラムを使った「クラム・チャウダー」は有名。ところが、サンフランシスコで日本人の女性観光客が店員に「クラム・チャウダー」と何回言っても通じない。店の人もバカで気が回らず、「へー?」「へー?」と言うだけ。僕はそれを見て、少しアメリカン・スラングっぽく「she'd like to eat a clam chowder, buddy……」と店員に言ったら、やっと通じてその女性に何回も感謝された。
■外国語を勉強する年齢が遅すぎる
「日本の生徒は12歳にならないと外国語を勉強しないという事実をヨーロッパの人に言ったら、すっごくびっくりします」
州によって違うが、ドイツでは最近小学校1年生から簡単な英語、5、6年生から第2外国語としてフランス語、ラテン語、スペイン語、10年生から第3外国語も選択ができる。日本でもよ~く知られていることだが、ピアノを始めるのに一番ふさわしい年齢は大体5、6歳。なのに、外国語は12歳から。
「僕のビデオ(72番、日本人と外国語)に、“外国語の勉強始める前に、まずは(日本語の)国語をちゃんと身に着けないと駄目だ!”というようなとんでもないコメントが書き込まれた。(正直に言うと悪いけど)こんな馬鹿なコメントは考えられない。世間知らずの証拠だと思うしかない。子供はいっぱい習いたがるもの、子供の頭脳の容量は無限に近いというのが教育学社会の中で一番よく知られている事実なんだから」
「日本の外国語教育をこんな姿勢だったら、日本は言語的だけでなく、世界的なレベルで経済的にも凄い打撃を受ける。中国人を見習えばいい。彼らの勉強ぶりは恐ろしいくらい完璧。中国語には400個以上の音節があるのと比べて、日本語の(多分世界の言語で一番少ない)46音節ははるかに劣るからこそもっと若い間に外国語の違う響きに慣れさせなくてはならない」
なお、日本でも2011年4月から小学校5、6年生を対象に年間35時間の英語必修化が行われるなど、外国語学習の開始年齢は早まる傾向にあり、文部科学省の外国語教育の考え方は多少改善に向かっているようだ。
日本人として耳の痛い話ばかり、でも勉強になりました。ありがとうございました。
(羽石竜示)