今、名古屋では「大」が話題だ。大名古屋ビルヂングという名前のビルがある。
名古屋駅で降車した時、目に飛び込んでくる駅前のランドマーク的ビルだ。近年は駅前に200m級の高層ビルが相次いでオープンし、そのネーミング由来の存在感も以前と比べれば薄まったが、いまだ駅前の顔の一つと言っていい。そのビルの建て替え工事が今年から竣工される。全国的にはイマイチな話題だと思うが、名古屋ではそれなり盛り上がっている。

しかし今回取り上げたのは、この「大」ではない。もう一つ穴場的な大名古屋、同市中川区にある大名古屋温泉という施設がある。昭和47年に開業した名古屋市内初の高熱天然温泉で、市内では由緒正しい温泉だ。愛知県温泉協会によれば、同市内で同協会に登録されている温泉施設は6ヵ所(そのうち1ヵ所は医療施設)。その筆頭格が大名古屋温泉なのだ。

大名古屋温泉は門構えから「大」という名にふさわしい。敷地入口には茶色をした縦長の巨石が両脇に置かれ、両方に大名古屋温泉と彫られている。建物は3階建てで横に広く、白の外壁に赤で大きく大名古屋温泉の文字が踊る。
昭和らしさを直球で感じられる外観だ。側面にはシャチホコをデフォルメしたマークが描かれ、存分に大名古屋をアピールしている。建物正面に広がる大きな駐車場も含め、大名古屋というネーミングの期待をある意味裏切らない。

外観から予想した通り館内は広々している。自動販売機で入湯チケットを買い、玄関先に立っている従業員へ渡し入館する。ふかふかとした毛足の長いカーペットが敷かれた長い廊下を抜けると大浴場がある。

同温泉によれば、泉質は低張性弱アルカリ性高温泉という分類。神経痛、関節痛、筋肉痛、五十肩、慢性消化器通、冷え性、打身、くじき、関節のこわばり、運動まひ、疲労回復などに効能があるそうだ。湯船も色々な種類があり楽しめる雰囲気。順に入ってみよう。

まず内湯の浴槽が広くて深い! 水深が腰あたりまであため、多くの年配の方が歩行浴していた。打たせ湯は上から流れる水流が各1本ではなく、両肩同時に打たせられるように2本セットになっている。
水泡が出る噴流式泡風呂も、座ると腰周辺に集中的に当たるジェットバスと、全体的に泡がわくバイブラバスの2種類を用意。微妙な違いにこだわる人も満足だ。その隣にある電気風呂は、他の場所で体験するものより若干電気が強い気がする。さすが大名古屋。露天風呂やサウナなど温泉では外せない設備に加えて、細かなこだわりはコネタ的に満足度も高い。

入浴後は休憩場所で一休みできる。食堂もあるが、特に印象深かったのがゲームコーナー。スペースがかなり広めに割かれているのだが閑散としていて寂しい。今は遠き昭和を否が応でも感じさせてくれる。湯上がりの一杯は、コーヒー牛乳も選べるし懐かしの森永マミー(紙パックではなく瓶)も買える。

料金は日帰り入浴の場合750円。しかし、最も客が入るであろう午後4時以降は550円に値下げされる心意気。
ホテルも併設されている。山の一軒宿も魅力的だが、たまには古き良き昭和の郷愁を感じながら、都会の隠れ湯で疲れを取ってみるのもいい。
(加藤亨延)
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