そんなんじゃなくて、本当の老後には言葉にできない苦悩や戸惑いがあるはずだ。
……それを、言葉にしていただきました! 9月13日にポプラ社から発売される『シルバー川柳 誕生日ローソク吹いて立ちくらみ』(税別952円)は、シニア世代を中心とした“人生の達人”たちによる川柳傑作選。
では、どんな川柳が掲載されているのか、少しだけ抜粋してみましょうか。
「年重ね くしゃみするのも 命がけ」
「起きたけど 寝るまでとくに 用はなし」
「まだ生きる つもりで並ぶ 宝くじ」
エグいね、しかし。クスッと行くどころか、ブハッと笑ってしまう。
ところで皆さん、「シルバー川柳」ってご存知ですか? 「社団法人 全国有料老人ホーム協会」は敬老の日に向け、高齢社会・高齢者の日々の生活に関する川柳を公募しており、毎年1万作を超える応募作が寄せられているらしいんです。
「ある日、親戚が『こんな、面白いのがあるんだけど』ってシルバー川柳を教えてくれたんです。その内容を読むと、本当に笑ってしまいまして……(笑)。そういえばみんなで『ワハハ!』と笑ったのは、久しぶりでした」(ポプラ社・浅井さん)
そうして同社が12年の歴史を持つ同イベントに寄せられた川柳の中から、最高峰とも言える88作を厳選。結果、今回の一冊にまとめられたようだ。
でも、よくぞここまで自虐的な川柳を! まぁ、シルバー世代が自分で応募しているからこそ、許されるんだろうな。
と思いきや、応募者のプロフィールを見ると30代とか40代の人もいるみたいで……。いや。この手のユーモアも笑って許し、楽しんでくれるのが“人生の達人”たる所以でしょう。ツービートの漫才(老人ネタ)を観て屈託なく笑ってた、おじいちゃん、おばあちゃんみたいな。
たけしと言えば、この本をテリー伊藤が絶賛している。
「笑って愚痴って、一生懸命。この愛すべき、ニッポン人たち」(帯に掲載されている、テリー伊藤からのコメント)
『元気が出るテレビ』や『お笑いウルトラクイズ』を作りだした天才演出家の琴線に、シルバー川柳が触れたか? 確かに「日帰りで 行ってみたいな 天国に」という作品からは、テリーさんに通じるセンスを感じる。
せっかくだから、素敵なエピソードも紹介させてください。入選作の決定後、毎年恒例の賞状を送った際。
「生まれて初めて賞状をいただきました。勉強で一番になったこともない、運動会で一等になったこともない。川柳でほめてもらったのは、長く生きてきてこれまでで一番光栄なこと。
入賞者から、このようなメッセージが寄せられたそうなんです。老いて、ますます盛ん! 年を取ったからといって、想像力に衰えが訪れるとは限らないのです。
そして面白いのは、世代によって川柳の感じ方が違うということ。例えば「目には蚊を 耳には蝉を 飼っている」という作品は、実感できる人とそうでない人に分かれてしまう。正直、私も想像するしか手段がないもの。一方、「留守電に ゆっくりしゃべれと どなる父」は、若い世代からの人気が高いらしいのです。
ということは、「目には蚊を 耳には蝉を 飼っている」は大人のギャグと言えるのかな……? 少しだけ、嫉妬を感じる。
「年を取るのはイヤだ」、「お荷物になるのはイヤだ」という声を耳にすることもあるけど、いやいやどうして。シルバー川柳のパワーと言ったら! お年寄りの暮らしぶりや思いが、リアルに伝わる一冊でした。
そのスレスレのユーモアは、我々にもストライクだな。
(寺西ジャジューカ)