――早速ですが、車両基地の魅力って何ですか?
「車両基地の魅力は『静』と『動』の対比です。まず『動』に関して言いますと、朝は日の出前から車両の1本1本に電気がついていき、ラッシュアワーには続々と車両が“出動”していく様子が見られます」
――ちなみに、山手線の車両編成は何本ありますか?
「52本です。池袋と品川から出て行く車両もありますが、DVDにも収録した大井町の東京総合車両センターから、大半の車両がどんどん出区していきます。この光景は見ていて圧巻ですよ。一方、『静』に関して言いますと、深夜2時ぐらいになると、全部の車両の電気が消されて寝静まった基地、まさに『静の世界』が見られます。ちなみに、撮影は面白いけど大変なこともありまして、長野新幹線車両センターに長野新幹線が並んでいる光景を撮影した際、夜の様子を深夜3時頃に撮影しまして、その時の気温は氷点下2度でした(苦笑)。我々は、一切物音を立てないように、凍えながらじっと寒さに耐えていたのですが、完全に無音というわけでもなく、どこからともなく何かの音が聞こえてきまして…そういった音も大事にしようということで収録しました」
そのほか、車両基地ファンにとって、とりわけ人気が高く「聖地」とも呼ばれている、尾久車両センターも収録。
「ここは、東京近辺では唯一、客車の寝台特急が鎮座している車両基地です。中でも人気の高い『北斗星』の姿もここにあります。踏切や跨線橋からもその広大かつ複雑な線路と架線の交錯が望めますよ」
さらに、普段は絶対に見ることのできない、終電後の誰もいない新宿駅の貴重な映像も見られる。
「新宿駅の映像だけは、車両基地とは関係ないんですけど(笑)。私自身、終電後に新宿駅で作業をすることが多かったので、いつかは誰もいない新宿駅の映像を撮りたかったんです。新宿駅は日本一の乗降客数の駅でして、その新宿駅に誰もいないという光景は、まさに究極の『静の世界』と言えます。お客さまは普段は見ることができない“非日常な空間”なので、ぜひご覧いただければと思いまして、特典映像的に収録してあります」
車両基地の魅力について語り始めると止まらなくなる手老さん。実は、手老さんは「スカパー!鉄道チャンネル」など、鉄道関係の番組にも出演されていることもあって、鉄道ファンの間でも知られている。鉄道に関して何か聞きたいことがあると、手老さんに聞いてくる鉄道好きの芸能人も多いほどだ。そんな手老さんは、どういう方なのだろうか?根掘り葉掘り聞いてみた。
――以前から鉄道ファンだったんですか?
「乗り物全般が好きで、営団地下鉄で駅員のアルバイトをしたこともありました。でも実は、前職は東急バスでして」
――バスの会社だったんですか!!
「ちなみに、家の前を東急バスが走っていて、僕が生まれて、一言めに発声した単語が『バス』だったらしいです(笑)」
現在は、株式会社ジェイアール東日本企画 メディア・コンテンツ推進センターに所属。主に、駅構内に設置されたデジタルサイネージ(電子看板)に関わっている。
●手老さんおすすめの駅
せっかくなので、手老さんにおすすめの駅を教えてもらった。
「まずは、青森県にある五能線の驫木(とどろき)駅です。鉄道ファンの間でも有名な駅で、すぐ目の前に日本海が広がっているので、波の音が『ザブ~ン、ザブ~ン』と聞こえてきます。あとは、津軽線の今別(いまべつ)駅です。駅舎のまわりに、のどかな風景が広がっています」
学生の頃は、在来線や夜行列車を乗り継いで旅行に行っていたそうだ。
最後に、手老さんにお話を伺う前から気になっていた、「アノこと」について聞いてみた。
――手老善(てろうぜん)さんは随分変わった名前ですが、本名ですよね?
「よく聞かれますが本名です(笑)。僕は東京の出身ですが、中伊豆あたりに多い名字らしいです。よく『毛老(けろう)』と間違えられます」
まさに「車両基地」DVDは、「変わった名前の手老さん」が手がけた「変わったDVD」なのである。(やきそばかおる)
車両基地(ユニバーサル ミュージック)
http://www.railyard-um.com/※プロモーション映像も実に綺麗