2010年にOVA(オリジナルビデオアニメ)として発売され、翌年にはTVアニメ化し、第2期の放送も決定。「美少女戦士セーラームーン」「ケロロ軍曹」など数々の名作アニメを手がけてきた、佐藤順一監督の新たな代表作となっている「たまゆら」

作品の舞台である広島県の竹原市は、ファンによる「聖地巡礼」が盛んで、NHKの情報番組でも取り上げられるなど、アニメファンに限らず話題を集めました。
第1期「たまゆら~hitotose~」の放送終了から1年以上が過ぎ、多くのファンが新たな情報や展開を待っていた中、ついに公式サイトが第2期バージョンにリニューアル。7月からの放送スタートが正式に告知されました。
同時に、主人公の女子高生・沢渡楓(CV竹達彩奈)や謎の少女が描かれた2期のキービジュアルと、4月14日(日)に開催される「たまゆら進級イベント」の詳細も発表。「たまゆら」を追いかけ続けてきた「たまゆらいた~」(自称)の筆者も、2期に向けて再始動します!
まずは、佐藤順一監督とともに「たまゆら」の企画を立ち上げ、育ててきた松竹の田坂秀将プロデューサーにインタビュー。「たまゆら」のこれまでを振り返りつつ、今後の展開についても聞いてきました。

――まず最初に、プロデューサーとしての田坂さんの仕事内容について、簡単に教えていただけないでしょうか。
田坂 仕事としては製作周り全般ですね。「製作」と「制作」のどちらにもプロデューサーがいるので紛らわしいですけれど。「制作」は、アニメーションそのものを作る仕事。下に「衣」がついている方の「製作」は、作品の方向性について話したり、予算などのビジネス周りのことや宣伝やイベントについて考えたり……。「制作」が担当すること以外は、全部「製作」の担当という感じですね。
それを取りまとめるのが、プロデューサーとしての仕事です。
――「たまゆら」は、企画の当初から現在のような作品だったのですか?
田坂 企画の草案自体は、佐藤監督が作られたもので。写真を撮る女の子が主人公で、日常の幸せを写真で切り取っていくお話を作りたいということ。彼女が撮る写真には、時々「たまゆら」(丸い光のようなもの)が映り込んで、それを幸せの象徴として見せたいといった内容でした。
――その草案がそのまま、作品や主人公の楓の設定にいかされていますね。
田坂 そうですね。それに加えて、私の方からは、作品の舞台について提案させていただきました。以前、「ARIA」というアニメがありまして。「たまゆら」は、「ARIA」のような日常の幸せが感じられる世界観を、現代の日本で表現していこうというお話だったんですね。
――「ARIA」も佐藤監督と松竹さんで製作された、ヒーリング系の作品ですね。大きな事件が起きるわけではないけれど、日常的な出来事や周囲の人々とのふれあいの中から、幸せをすくい上げて描いていく。舞台は未来の火星でしたが。

田坂 今回は、架空の街を作ったり、モデルの街の名前を変えて舞台にするのではなく、実際にある土地をそのままリアルに使いたいとご相談しました。「自分の身近にも、こんなことがあるかもしれない」という感じを、より強く出していきたいと思ったんです。
――どのような経緯で、舞台が竹原に決まったのですか?
田坂 最初、ある旅行会社さんに相談したら、そこにものすごく鉄道に詳しい方がいて。日本中の路線に乗ったことがあるという鉄道博士のような方だったんですよ。そして、佐藤監督のイメージなどを伝えたら、いくつかの候補地を挙げて下さったんです。その中に竹原もあって、最終的に佐藤監督が選びました。
――その旅行代理店の方がいなかったら、竹原が候補地に入っていなくて、別の土地が舞台になってたかもしれませんね! 広島県民として御礼を言いたいです(笑)。ところで、そうやってOVAの企画を立ち上げていた頃、TV第2期や東京での大規模イベントの準備をしている今の状況を想像できていましたか?
田坂 まったく考えてなかったですね(笑)。今回のイベントは昼と夜の2回回しで、会場の「TOKYO DOME CITYHALL」は合計4600人くらい入れるんです。「たまゆら」の中でも最大のイベントなので、ドキドキもしています。
――それだけ人気のある作品に育ってきた「たまゆら」ですが。この作品に関して、「これは予想以上に上手くいったな~」と一番感じることは?
田坂 いろいろとありますが、やっぱり一番は、地元の竹原の方々が一緒に盛り上がってくださったことですね。
竹原でもいろいろなイベントをしたりと、かなり仲良くしていただいて。
――トークイベントの会場がお寺の境内だったり、フェリーの船上や商店街だったり。他の作品にはないイベントも多いですよね。
田坂 それに「たまゆら」は、キャストやスタッフと、街の人、ファンの人との距離がかなり近いんですよ。そのアットホームな距離感って、すごく「たまゆら」らしいし、作ろうと思って作れる関係性でもない。アニメの世界は二次元ですけど、それがリアルな人と人との出会いにも繋がって、喜んでもらえている。そういうことができるコンテンツになってきたのが、すごく嬉しいです。
――2期についても聞かせてください。先日、発表されたキービジュアル。楓と同じ制服を着た女の子の後ろ姿が描かれているのですが……。髪型や髪色を見る限り、楓の親友の塙かおる(CV:阿澄佳奈)、桜田麻音(CV:儀武ゆう子)、岡崎のりえ(CV:井口裕香)の誰でもなさそうですし……。やはり、2期から登場する新キャラですか?
田坂 新キャラなのか、誰なのかはまだ言えないですが……。
ポイントは、その子がカメラを持ってるというところで。今まで、楓の友達には写真を撮っている子がいなかったんですね。でも、カメラを持ってるキャラが描かれているということから、いろいろ想像していただければと。
――気になりますね……。今現在、2期については、どのような作業を?
田坂 脚本の作成作業中ですが、いち視聴者的な目線で見ても、すごく良い話になっていると思います。僕ら「たまゆら」の製作委員会の人間って、本当に「たまゆら」のファンが多くて。作品への語り口がドライじゃない。すごく情熱的な人が多いんです。そして、会議でも、それぞれが「もっとこういうところが見たいです」「いや、こういうところが」みたいに言っていて(笑)。
――商業的な理由のリクエストではなく、自分たちが見たいお話をリクエストされている?
田坂 ちょっとそんな感じなので、監督的には辛い状況かもしれません(笑)。でも、そうやって作っている脚本なので、ファンの皆さんの観たい話もたくさんできていると思います。
――とても楽しみです。
「進級イベント」の入場券先行販売の申し込みも始まっていますが(2月24日18時まで)、このイベントでも2期の新情報が?
田坂 もちろん、2期のオープニングイベントですから。キービジュアルの女の子のことなど、皆さんもいろいろと気になっているところはあると思うので。その中のどの部分についてかは分かりませんけど、2期について、もう少し知っていただく予定です。あと、今回は、メインキャスト全員に出ていただこうと思っていて。
――人気女性声優12人が参加されるということで、驚きました。ほぼオールキャストですね。もちろん佐藤監督も出演されるし、1期EDアーティストの中島愛さんと、音楽を担当した中島ノブユキさんのライブもあるんですよね。
田坂 スケジュールが合わなくて参加できなかった方もいるんですけど。「たまゆら」の世界に戻ってきてくれる皆さんを、キャストとスタッフのみんなでお出迎えしたいという思いもあって、こういうメンバーになりました。
――「たまゆら」はイベントの多い作品ですが、特に印象的なイベントは?
田坂 一番は最初(2010年10月)に竹原でやった「たまゆらの日」のイベントでしょうか。まだOVA発売前で、しかも場所は竹原。どれだけお客さんが来てくれるのか不安でしたが、2000人近いお客さんが、竹原という街やイベント自体を楽しんでくださった。
キャスト陣も初めての竹原で、作品や街への愛情を深めてもらえたし。あのイベントが、今の「たまゆら」に向かって進み出す第一歩だったなという気がして、非常に印象深いです。
――4月の進級イベントも、同じくらい盛り上がるイベントに?
田坂 2期の最初のイベントなので、「たまゆらの日」に負けないくらい印象的な日にしたいですね。
――楽しみにしています。では、最後に読者へのメッセージをお願いします。
田坂 1期が終わってから1年2か月くらい経つのですが。これだけ時間をかけた分の内容をお見せできるように。本編はもちろん、イベントや宣伝など、いろんなところで楽しんでいただけるものを用意すべく努力しています。引き続き応援をお願いします。まだ「たまゆら」を観たことがないという方は、非常に温かくハートウォーミングな話なので、ぜひ一度作品に触れて、日々の疲れた心を癒していただきたいですね。7月に始まる2期からでも分かるお話になっていますので、ぜひご覧いただければと思います。
(丸本大輔)

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