客席後方、スクリーンに向かって左側のドアが開き、差し込む真っ白な光。
主題歌、FLOWバージョンの「CHA-LA HEAD-CHA-LA」ととともに、まずは真っ赤なジャケットの野沢雅子が現れた。

「うおおおーっ」
興奮する満員の観客。17年ぶりの悟空の登場だ。
つづいて山寺宏一(破壊神ビルス)が、佐藤正治(亀仙人)が、堀川りょう(ベジータ)が、古川登志夫(ピッコロ)が、そしてゲスト声優の中川翔子(予言魚)、細田雅弘監督。
観客たちの歓声と握手をもとめる腕の波をかき分け、時に笑顔で応えながら、ステージに向かって進んでいく伝説のアニメの声優たち。
「鳥肌が止みません!」と司会のフジテレビアナウンサー松尾翠。
2013年3月30日、東京有楽町丸の内東映1「ドラゴンボールZ神と神」初日舞台挨拶は、まさに神々の登場で幕をあけた。


「しょこたんは、ベジータ好きで知られてますけど、いま隣に立って、どうですか?」
「(頭のてっぺんから)ほわああああああ(しゃがみ込みそうになるのをこらえつつ)ほわあああああ! 今……死んで、輪廻転生で生き返って……(激しく手を上下させながら甲高い早口で)くぁwせdrftgyふじこlp!!(まったく聞き取れない)」

終始やさしい笑みをたやさない野沢の隣、挙動不審のオレンジ色のミニドレス、登壇者のなかで飛び抜けて若い27歳。この日、神々のあいだに、観客と同じわくわく状態でステージに立っていた人、それが中川翔子である。
「ドラゴンボールZ神と神」は、宇宙の運命を賭けた魔人ブウとの戦いから数年後を舞台とした完全オリジナルストーリーで、原作者の鳥山明が、はじめて脚本から深く関わった映画である。中川の演じているのは、悟空の強敵となる破壊神ビルス(山寺宏一)とともに、映画のオリジナルキャラクターである予言魚。
だがその前に、中川は「ドラゴンボール」の大ファンなのだ。1月に「しょこたんぶろぐ」で披露したイラストからも、その愛の深さが伝わってくる。

この日の中川があまりにもおもしろかったので、発言をほぼ全記録でお送りしてみる。


●気持ちの悪い1オタク

司会「山寺さん、中川さんにおうかがいしますが、おふたりははじめて今回ドラゴンボールの世界に本格的に入られたわけですけれども、本日初日を迎えて、今ののお気持ちは?」
中川「はい……(マイクを両手で握りしめて)。こんな、ただのただの、ねえ、気持ちの悪い1オタクが、初日舞台挨拶という宇宙でいちばん神聖な場所にいっしょに立たせていただているこの事実が信じられなくて夢のようで。でもその夢を叶えてくれたのは、悟空で、ドラゴンボールであり(だんだん涙声に)ほんっとにほんとにほんとに生きてるとこんなミラクルが起きるんだということをドラゴンボールがすべて教えてくれました。ほんとに夢のようです。(完全に泣き声になって)悟空とベジータのあいだで(このあたりから聞き取れず。
語尾は悲鳴に)。神様神龍様悟空様! ありがとうございます! 悟空に夢を教わり、ベジータ様に怒鳴られることが人生でいちばん興奮する妄想であり、ピッコロ様に優しさを教わって(泣いて)亀仙人様にぱふぱふを教わって、ほんとに幸せです」(野沢の顔をしっかりと見る。深く頷く野沢)。
「もうこの映画が公開されることは、全宇宙のみんなが元気になって幸せになることで、きょうがほんとに世界平和の日になると、思って、昨日眠れませんでした。みんな気を高めて楽しみましょう、よろしくおねがいします」(深々と礼、会場から割れんばかりの拍手)

司会「ありがとうございます、では、山寺さん」

山寺「……このあとしゃべりにくいわ!」(会場笑)


●永遠に不老不死で

司会「中川さん、ドラゴンボールは義務教育に入れたほうがいいなんて発言もされてますが」

中川「激しくそう思います、こころからそう思います。まさしくほんとに、勇気、友情、愛、そして世界平和、ひとりひとりが協力すること、生きること、いろんなこと、宇宙にあるすべてのことがドラゴンボールには詰まっていて、わたしはどんなひとりの夜でも、どんなときも悟空が勇気をくれました。
そして、また子どもだったひとがおとなになり、あるいは親になり、親子2代で3代で、改めて17年ぶりにあのわくわくを映画館で観ることができる、こんなに生きてるってしあわせなんだと、そしてまた今回の映画ではじめてドラゴンボールの世界に触れる、あらたな世界が生まれてきている(興奮して早口に)なんてすてきなことなんでしょう地球が存在するかぎりドラゴンボールは不滅です(声上ずっている)野沢さん永遠に(息を吸って)永遠に永遠に永遠に(マイクを両手で握りしめ)不老不死でいていただきたいです」(ひたと見つめる。野沢、ほほえみながら深く頷く)


●神龍に願いたいこと

中川「今回の映画が17年ぶりに帰ってきてくれたのは鳥山明先生が、東北の震災の姿をみて、子どもたちに勇気を与えるためにと立ち上がってくださったからということを聞いて、すごく勇気をいただきました。できればこれから毎年またドラゴンボールの映画に帰ってきれほしいです。毎年また映画がみたいです(会場拍手)。あと……あと……、ベジータ様に怒られたいです」(会場笑)
堀川「怒られたいの?」
中川「(消え入りそうな声で)怒られたいです」
堀川「こら!」
中川「ぎゃーーーー!(舞台に崩れ落ちる)ありがとうございます(土下座し、天を仰ぎ見て)神龍様ありがとうございます! ……夢がかなった! も、妄想でしかなかったことが!(このあたりから言ってることが聞き取れない)」
司会「落ち着いて!」


「ドラゴンボールZ神と神」絶賛公開中です。

(アライユキコ)