……遠い昔、遥か彼方の関西で、某有名SF映画のパチもんを集めているとても奇特な人物がいた……。

出だしからパクリだがそれはさておき、1977年に全米で公開されて以来、世界的に愛されている超有名なSF映画がある。
グッズも数え切れないほどのラインナップで発売されているが、20数年前からその非公認のニセモノアイテム、いわゆる“パチもん”をせっせと集めてきたのがテムラさんこと木村修一さんだ。
実はこのテムラさん、ルー○スフィルム公認イベントにも日本代表のコレクターパネリストとして参加したことがある、いわば世界的に知られたユニークなコレクターなのである。

このたび、そんな彼の激レアなコレクションが大阪・北浜のギャラリーLinksで初めて一般公開されることに。ご本人にコレクションを始めたきっかけや、展示の見どころなどを聞いてみた。

「僕は今44歳なんですが、僕ら世代の男の子は1978年の公開当時、誰もがこの作品にハマってたと思うんです。『ゴジラ』くらいしか見たことがないなかで、結構衝撃的な作品やったんで。
小学3年生くらいから正規品のおもちゃなんかをずっと集め続けていたんですけど、だんだん買いたいものが無くなってきたんですよね。コレクター同士で数の多さやレアアイテムを競い合うようになって、それもしんどくなってきた1995~1996年頃に、大阪のトイショーで100円で投売りされてるパチもんのおもちゃを見つけたんです。中国製で、塗りがめっちゃ下手くそで(笑)。でも個性的でおもしろいし、100円やからええかと思って買ったのがきっかけでハマってしまいました」

商品名が“スター○○○”“ギャラクシー○○○○”などとアレンジされ、彩色が雑だったり、手足の長さなど体のバランスがおかしい、パッケージと実物の仕様が違う、などなどパチもんの定義はさまざまだが、テムラさんはこのパチもんたちに独特の美学を感じるのだという。

「パチもんはオフィシャルのものじゃないから、なんとか言い逃れできるように工夫して作らないとどこかからツッコまれるし、良くも悪くもよく考えられてるんですよ。例えば正規品なら、今の時代は3Dスキャンで俳優をスキャニングしてそっくりなコピーが作れるんです。
でもそれだと、カッコいい言い方をすればクリエイティブな部分がゼロなんじゃないか?って。そういう意味で、パチもんは製品が作られる過程でどんな風に変換されちゃったのかを楽しめるのがいいんです」

現在は世界各国で作られたパチもんをなんと1000~1500点ほど所有。特に思い入れがあるのは日本製のカード類などの紙モノやプラモデルなのだそうだ。

「パチもんは集めてる人も少ないですけど、いま現在残ってる商品も少ないんですよね。なので、一般の方から見たらどれも珍しいだろうとは思いますし、初めて見るようなものが多いんじゃないかと。海外でいうと、昔共産圏だった国のはパチもんが多いんですよ。
アメリカからモノが入ってこないんで、自分たちで工夫して作ってたりする。おなじみの中国やスペイン、メキシコ、ギリシャ、ブラジル、トルコですとか。トルコのフィギュアはアメリカ製の型を利用したものなんでフィギュア自体はよくできてるんですけど、おまけに付いてくるカードのデザインがおもしろくて。フィギュアを利用したジオラマ風カードなんですが、キャラクターがいじってるメカが、明らかに電卓だったり(笑)」

今回は、厳選されたパチもんの製品そのものはもちろん、貴重なセット売りのパッケージや、プロの造形師の手によって鮮やかに仕上げられたプラモデルなども展示されるとのこと。
「これを僕が保管しておかないと、今後世に残らないかもしれないっていう使命感もあって。コレクションは修行みたいなものです(笑)」とご本人は語っていたが、精密さや再現度にこだわる風潮の強いいまのホビーの世界ではありえないほどレアで、かつゆるいアイテムたちに出会える『パチモンウォーズ』。
愛すべきパチもんの世界にあなたもぜひ一歩、足を踏み入れてみてほしい。
(古知屋ジュン)

『完全超悪☆パチモンウォーズ 偽者大戦』
会場:Links
会期:7/23(火)~8/4(祝) ※期間中は休みなし
開館時間:12:00~19:00 
観覧料:無料