友人から表パッケージに「ありがとう」と書かれたタマゴボーロをもらった。食べてみると、どこか懐かしく心にしみるような優しい味。
そして裏には、「このお菓子にはありがとうを100万回聞かせてあります」という驚きの文言! このお菓子、正しくは、愛知県の竹田製菓株式会社が販売する、「ありがとうボーロ」。それにしてもお菓子に100万回の「ありがとう」を聞かせるって? 同社製菓事業部の和泉さんに話を聞いた。

同社会長は株の世界でも有名で「日本一の個人投資家」といわれる竹田和平さん。約100人の保育園児たちの声がCDに録音され、工場では原料の仕入れ段階からお菓子の出荷時にいたるまで「ありがとう」がこだまする。厳密にいうと、工場内に流れている「ありがとう」は約4秒に100回、1時間で9万回、24時間で216万回。お菓子が出荷するまでに、大体100万回の「ありがとう」を聞かせていることになるという。


「すべての人に愛され、安心、安全、そして健康に優しいお菓子を届けることができるよう、特に良質の原材料にこだわる」というのが同社のポリシーだが、さらに100万回の感謝の気持ちがプラス。同社で製造されるすべてのお菓子に「ありがとう」のエッセンスが入り私たちの元へやってくる。

以前、会長は水に「ありがとう」を聞かせると、きれいな結晶ができるという本を読んだことがあったそう。「本の内容の真偽はともかく、人から『ありがとう』と言われたときは、素直にうれしいと感じ、心が高まります。皆さんにおいしいお菓子を届けたいという気持ちがきっかけになりました」(和泉さん)。会長は普段から全ての社員に、「お疲れさま」ではなく「ありがとう」と声がけする。


かつて、社員は1時間「ありがとう」を言うと、給料とは別に手当てが出たというからすごい。「『ありがとう』と声に出していると、みんな自然にニコニコしてきます。現在は毎朝、朝礼で『ありがとう』を各セクションで合唱しています」(和泉さん)。そのおかけで、社員の感清が豊かになりチームワークが良くなるなど変化が起きているのだそうだ。「言わなくても伝わっているだろう」と思ってしまっていた私には耳が痛い。

牛や鳥にクラッシック音楽を聞かせるとミルクの産出量が増えたり、植物に話しかけると成長するという話を聞いたことがあるが、「ありがとう」を聞かせることで、同社のお菓子は美味しくなっているのだろうか?それについては、人それぞれ感覚に個人差があり分からないというが、社内の雰囲気がよく、波動の良い環境で製造されたお菓子を食べてみたいと思うのは当然のこと。


この「ありがとうボーロ」は、個人用としてだけではなく、企業用のノベルティグッズや、営業先へ感謝の気持ちを表すギフトとしても人気だという。「ありがとう」と普段から言ったり言われたりすると、気持ちのいい人間関係が構築できる。会長いわく、約40分あれば3000回の「ありがとう」が言えるのだそうだ。言っても言い過ぎることはない感謝の気持ち。そういえば、友人から「いつもありがとう」という言葉とともに、「ありがとうボーロ」をもらったのだった。まずは、私も身近な人にちゃんと「ありがとう」を伝えたい。

(山下敦子)