そんな鰻ですが、幼魚であるシラスウナギが不漁だったり、そもそもニホンウナギが絶滅しそうで絶滅危惧種になりそうというニュースが出ています。そうなるとちょっと食べるのに躊躇しちゃうのが人情というもの。じゃあいったい、何を食べて夏バテに対処すればいいのでしょうか。
そんな人にお勧めなのが「甘酒」です。えっ? この暑い中に甘酒を飲むの? そもそも冬に飲むものじゃないの? と思った人もいるでしょう。実は江戸時代の昔には、甘酒は夏の飲み物だったのです。
夏になると町中には「甘酒〜え、甘酒〜え」と声を張り上げる甘酒売りがやってきました。そして、冷たい甘酒を飲み水として、そして何より疲労回復のための栄養源として江戸の人は飲んでいたのです。このことから、甘酒は俳句でいうと「夏の季語」となっています。甘酒売りがやってくると、夏がきたと感じる風物詩だったのですね。
甘酒にはどんな効用があるのか。まず、ブドウ糖が豊富です。これは飲んですぐにエネルギーに変わります。さらにはビタミンB1、B2、B6と言ったビタミンB群や、必須アミノ酸が豊富に含まれています。こういった成分が現在の点滴の成分と近いということから、甘酒は「飲む点滴」と言われている、栄養ドリンクなのです。前述の鰻と比べても、ビタミンAとかが無いだけでしょうか。栄養価では決して見劣りしません。いかにも夏バテに効きそうですよね。
もちろん美容にだっていいのです。保湿効果があるビタミンB2やB6が豊富ですし、脂質の代謝を促進してくれます。抗酸化作用から美白作用、さらには抜け毛にも効果的! これはもう鰻の代わりと言わずに、普段から飲んでもいいのではないでしょうか。
現在手に入る甘酒は、大きく分けると2種類あります。
もうひとつは、「酒粕からつくる」甘酒です。酒粕は、お酒を造るときに米と米麹を発酵させ、酵母でアルコール発酵をし、できあがったもろみをしぼって日本酒を取り出すのですが、そこに残ったものです。なので、物によってはアルコールが残っている場合があります。酒粕をよく溶かした甘酒はなめらかな口当たりとのどごしを楽しむことができます。
子供が飲んでも大丈夫な甘酒は、主に「米と米麹でつくったもの」です。もちろん酒粕タイプでもアルコールが含まれていなければ問題はありません。また、前者のタイプの甘酒は、米を米麹で分解した糖分だけで甘くなっています。酒粕タイプのものは、砂糖を加えて甘みをつけるのですね。
甘酒は普通に飲んでも美味しいのですが、やはり夏はキリッと冷やして飲みたいところです。氷を浮かべてロックで飲んでもいいでしょう。普通にロックで飲むだけではなく、氷を砕いた中に甘酒を入れ、シャーベット状にして飲むのもまた美味しいです。さらには、ショウガを加えたり、豆乳で割ったりするのもオススメです。
暑い夏は食欲が落ちたりするものです。そんなときは、甘酒を朝ご飯の代わりに飲むのもいいでしょう。忙しい朝でも、冷やしておいた甘酒をキュッと飲んでから行動をすると、活発に動けることと思います。
土用の丑の日はもともと「う」のつくものを食べるといいとされていました。そこで平賀源内が、鰻屋の店頭に「本日丑の日」と書くことを勧めてから、現在のように鰻を食べるようになったと言われています。残念ながら甘酒には「う」が含まれていませんが、栄養はびっくりするほど含まれています。
(杉村 啓)