大阪は粉もん文化といわれて久しい。
確かに、たこ焼き、お好み焼き、うどん……と、名だたる粉もんが根付いているわけだが、そこにあぐらをかいているわけではない。
日々、新しい粉もんも、登場しているのだ。

粉もんはお店が切磋琢磨したり、時には偶然から生まれることも多い。そんな粉もんのひとつに、ぺちゃ焼というものがある。
これを販売しているのは“あほや”さん。大阪を中心に現在は70店舗、9月の出店予定の店まで入れると73店舗お店を構える、たこ焼き屋さんだ。
ぺちゃ、という響きも可愛いこれは、一体どういうものかというと……。

「ぺちゃ焼とは鉄板の上に卵を割り、その上にとろけるチーズをのせます。そこにたこ焼きを3個置き、上から鉄板でプレスして、ソースとマヨネーズをかけて食べるものです」と、なかなか美味しそう。

生まれたのは平成11年と、もう10年以上も前。しかし、誕生のきっかけは意外なものだった。
「当時、お店が暇でした。売れ残ったたこ焼きは、鉄板の上で固くなってしまいます。
廃棄していたのですが、あまりにもったいないので、なんとか使い道はないものかと考えました。その頃はイカ焼きやお好み焼きもやっていたので、幸いお店にチーズやイカ焼き器もあります。そこで、思いつきでやってみたところ意外と美味しかったのです」
と、誕生は、まったくの偶然の産物なのである。

この新商品を売り出すにあたって、最初は“売れ残り焼”と名付けて販売していた。
「お客様を欺くのは心苦しいので……」というが、これが、売れた。
売れ残りのたこ焼きがなくては、このメニューは作れないが、常連さんの熱い要望もあり、出来立てのたこ焼きで作るようになる。


そのうちに段々と売れ残り、ではなくなってきたので商品名を“ぺちゃ焼”に改名したという。
味はチーズとソース&マヨネーズ。と絶対に間違いのない組み合わせ。冷えても美味しいのが人気の秘密だそう。売り上げ的には全店で売り上げの20%程度で、やはりたこ焼きが主役だが、ぺちゃ焼はテレビでも紹介されじわじわ人気が広がっているのだそうだ。

この他にも、大阪にはたこ焼きの元祖ともいわれる“ちょぼ焼き”など、変わり種粉メニューは非常に多い。

その理由として、商売人が多いからササッと食べられるものがいいのだとか、安くて美味しくお腹が膨れるのが好まれる、だとか。諸説はあるようだが、確かに軽い夏バテ程度なら、粉もんは食事代わりに食べやすそう。
食欲のなくなる夏こそ、粉もん。いかがでしょうか。
(のなかなおみ)