朝からこんなに食べて胃は大丈夫なのかと心配までしてしまい、この食生活は参考にできなかったものの、思い起こしてみるとテレビで活躍する人たちだけじゃなく、身近でもお肉好きな人は肌がきれいな気がする。気のせいなのか? それとも偶然なのか? 頭の片隅で気になっていたので『肉食女子の肌は、なぜきれいなのか?』という本を見つけたとき、すかさず手にとって読んでみた。
本書は“分子整合栄養医学”の専門家・森谷宜朋先生の著書。“分子整合栄養医学”は聞き慣れない言葉だが、“身体を構成する細胞に必要な分子(栄養素)の不足や乱れが病気の原因になるため、細胞の分子濃度(栄養状態)を正常な状態に整えることで、病気や老化を予防・治療する”ものだそう。
ちょっと難しく感じるが、本書の内容は“こんな体の不調はこの栄養が不足しているから”ということがわかりやすく書いてある。いくつか簡単に紹介すると……
■甘いものは老化の原因になる
コラーゲンやエラスチンはタン白質でできている細胞だ。甘いものをたくさん摂ると、糖分がタン白質にくっついてしまい、これらの細胞がうまく働かなくなり、肌のはりが失われ、しわやたるみができてしまう。さらに、本書を手に取るきっかけになった、この疑問は本当だった。
■肉食の人の肌はきれい
お肉には皮膚の材料となる含硫アミノ酸が多く含まれている。またコラーゲンをつくる際には鉄が必要で、お肉に含まれている有機鉄は吸収がよいので、肌にはりをもたらしてくれる。
なるほど、そういうことなのか! 他にも本書を読んでいると驚くことばかりである。編集担当の君和田さんにお話を伺ったところ、一番驚いた内容は「ふたつめの脳と言われるほど、腸が精神的にも重要な臓器であることに驚きました」とのことだ。
■腸も自律神経を調節する
“第2の脳”とも言われる腸には1億個もの神経細胞が存在していて、腸でも自律神経の調整を行っている。自律神経の調整をきちんと行うためには腸内環境をよくしないといけない。そのために善玉菌を増やし、悪玉菌を抑えること。
これには私も驚いた。眠りが浅かったり、冷え性だったりする人は少し気にしてみてもいいかもしれない。
そもそも本書をつくるきっかけになったのは、編集担当の君和田さんの経験から。「疲れやすくて貧血気味、そして大人のニキビが治らないという悩みを抱えていた方が、久しぶりにお目にかかったら顔色もよく、とっても元気になられていたので、なぜかを伺ったところ森谷先生を紹介してもらいました」
君和田さんご自身も、食生活で気をつけるようになったことがあるそうだ。「卵は食べ過ぎてはいけない、と思い込んでおり、一週間に2個くらいしか食べていなかったのですが、毎日食べるようにしています。魚もよく食べるようになりました」
鉄分を効率よく摂取するにはホウレン草・ひじきよりお肉のほうがよい、オリーブ油が体にいいのは本当……などなど他にも聞いたことがある、世間で言われている食についての話を検証してくれていてとても役立つ内容だ。
さらに頭痛の原因は鉄不足であったり、ストレスがシミを濃くしたり、薄毛・抜け毛はタン白質と亜鉛不足によるものだったり、日々気になっている体の悩みが、食生活を改善すると軽減・解消されるという。悩み軽減の糸口を本書で見つけられるかもしれない。
最後に、君和田さんにどんな人に読んでもらいたいか伺ってみた。
「健康診断で問題がなく、病院にいっても原因はわからない。でも、なんとなくだるい・疲れやすいという方に読んでもらえればと思っています」
日々の食生活の中に潜んでいる、不調の原因をみつけてみてはいかがだろう。
ちなみに、私が一番驚いたのは“タン白質が不足すると足が短くなる”だ。戦後、日本人の足は長くなったが、最近の子どもはまた短くなってきているらしい。成長期を迎える前のお子さんがいらっしゃる方にも目を通していただきたい。
(上村逸美/boox)