日本でトーストといえば、カリッと焼いた食パンに、バターやジャムを塗ったものをイメージするに違いない。
一方、韓国でトーストといえば、2枚の食パンに卵焼き、ハム、刻んだキャベツなどをはさんだものとなる。
ハンバーガーやサンドイッチと大きく違うのは、事前に溶かしたバターの上でパンを焼くことと、ソースとしてケチャップをかけた上に砂糖をたっぷりまぶす(これが意外とイケる)など、甘めの味付けになっていることだ。
このおかずパンは屋台でも売られ、庶民の朝食やおやつとして愛されている。韓流の街・新大久保で食べたことがある人もいるだろう。

ところで釜山大学前では、韓国においてもめずらしい、2枚ではなく3枚のパンで具をはさむ「3段トースト」なるものが名物となっているという。B級フードに目がない記者が、一体どんなものか、釜山まで食べに行ってみた。

地下鉄1号線「釜山大学」駅で下車し、大学正門に向うと、そのお店はすぐに分かった。
赤やピンクやオレンジの派手な屋台が、正門のすぐ横にいくつか並んでいるからだ。それらはどれも3段トーストのお店であり(同業者が一箇所に集まっているのは韓国ならではといえよう)、他にも果物ジュースやワッフルを扱っている。

なかでも最も正門に近い「正門トースト」に立ち寄ってみた。メニューは、ハムトースト2000ウォン(約183円)、チーズトースト2000ウォンを始めとし、サツマイモトースト2500ウォン、牛プルコギトースト2500ウォン、トッカルビ(ミンチ肉を固めた韓国料理)トースト2500ウォンなんてのもあり、どれも3段だということ。
記者は一番人気だという「スペシャルトースト」2500ウォン(約228円)を注文してみた。

店のおばちゃんは鉄板の上にマーガリンを塗り、その上で3枚の食パンを焼き始めた。
と同時に型で四角い卵焼きをつくり、ハムを温める。
それぞれに火が通った後、3枚のパンをならべ、1枚のパンにハムと卵焼きとマスタードソース、1枚のパンにハムとピクルス、キャベツやピーマンのみじん切り、そしてスライスしたリンゴを乗せ、甘みのある特製バーベキューソースをかけた。おかずパンなのにリンゴ? それにバーベキューソースやマスタードソース? いったいどんな味がするのだろうか。

それをひとつに重ねれば完成。三角形の紙容器に入れて渡してくれた。見るからにすごいボリュームである。

熱々をその場でいただく。おお、これは美味い。ハムや卵などの具と、甘じょっぱいソースのバランスが絶妙だし、そこに現れる爽やかなリンゴの味が、ちょうどいいアクセントとなっている。3段というのも、ひとくちでほおばるには、ぎりぎりちょうどいい大きさだ。
全部食べると、おやつどころかちょっとした昼食になりそうなほど満たされてしまった。2500ウォンという価格もうれしい。


お店の方によると、同店は10年ほど前から営業を行っており、3段トーストは学生だけでなく外国人、特に中国人に人気があるそう。味の秘訣を聞くと「新鮮な材料を使っているからよ」と、すこぶる普通な答えだったが、おばちゃんが愛想よく話をしてくれ、そんな人情溢れる雰囲気も人気のひとつなのだろうと思った。
「正門トースト」は朝7時から夜1時まで営業。朝食にも、昼食にも、夜食にも、お酒のシメにも(?)、みなさんも機会があれば、いちど味わってみてはいかがだろう。