4歳の娘を見ていると、つくづくスマホネイティブ、デジタルネイティブだと思う。親のスマホやタブレットを、時として親より器用に使いこなす。
アプリで遊んだり、写真を撮ったり、そういえばこの前は、Siriと会話をしていた。周りの子どもたちも大体似たような感じ。直感的に操作できるユーザーインターフェースが優れていることもあるが、やはり子どもたちの頭は柔軟だ。

国は2020年度までにすべての小中学校の子どもたちにデジタル教科書を配布することを目標に掲げており、タブレットが子どもに欠かせないアイテムになるのもそう遠い話じゃない。

すでに一足早く「1人1台タブレット」の取り組みを進める学校も現れはじめた。たとえば、東京都多摩市立東愛宕小学校。
2013年10月からは全校児童に1人1台iPadを持たせ、教科を問わず授業で活用している。公立学校の取り組みというのが驚きだ。

先日、同小学校に取材に行ってきた。1年生の教室に入ると、そこには放課後にタブレットを使って自習する子どもたちの姿が。DeNAの通信教育アプリ「アプリゼミ」を使いこなしながら、自由に文字を読んだり、数字をなぞったりしている。学習タイムとは思えないほど、楽しそうな様子が印象的だった。


アプリならではのメリットはいろいろある。まず、ランキングを競い合えたり、動きが楽しかったりとエンターテインメント性が高く、子どもたちが夢中になりやすい。また、“なぞり書き”などは書き順が合っているかも判断でき、なぞり方の精度によって点数も付く。機械による採点は客観的でブレがなく、子どもも納得しやすい。

この日、子どもたちが使っていた「アプリゼミ」は2014年4月に正式リリース予定のもの。現在、同校ではDeNAと協力して、開発中の一部機能の評価テストをしているそうだ。


もちろん、子どもにタブレットを持たせることに不安を感じる親がいないわけではない。危険なサイトを見るのではないか? 目が悪くなるのではないか? 外で遊ばなくなるのではないか? ……心配を挙げればキリがないのかも。しかし、導入を決めた松田孝校長は次のように説明する。

「もちろん、“これだけの確証があって、こういう効果があるから使います”といえるわけではなくて。だって、新しいじゃないですか。iPadの発売は2010年、まだ4年目ですから、いろんな課題があって当然。
でも、それを理由に使うことを制約してしまうと、いろいろな可能性も失ってしまうのではないかと。だから今は結構好きに使いながら可能性を探っているところ。5カ月たちましたが、とくにトラブルは出てきていないですね」

保護者アンケートでは回答者の7割が使うことに理解を示し、「楽しくて集中しているし、子どもの学習に役立つのではないか」といった意見が出ているそう。ちなみに高学年になるとローカルSNSを利用し、友だち同士の他愛ないおしゃべりなども楽しんでいるそうだ。

「保護者の方のなかには、自分たちが受けてきた教育をそのまま子どもたちに再現してもらうのがいいと考える人もいます。ただ、やっぱり時代は変わっていますから、世の中も変わっていかなくてはならない。
私たちが育てるのは今の時代に合った子どもではない。10年20年先の時代を見て、その時に子どもたちにどんな力が必要なのか、しっかり考えながら育てていきたい」
と松田校長。そのための手段として、タブレットは非常に有効であると考えているそうだ。

ちなみに「アプリゼミ」には現在、同校と協力して開発中の「小学1年生講座」のほかに、すでに配信済みの「小学校入学準備号」(※2014年3月末までは無料でダウンロード可能)もある。取材後、自分の娘にも体験させてみたところ、かなり集中していてビックリ。なかでもハマっていたのが「おっしゃれーなびようしつ」というコンテンツ。
女の子の髪型を整えながら数の概念を学んでいくものだが、絵もかわいいし、音声もユニーク。4歳でもかなり楽しめていた。

実は今回の取材まで、スマホやタブレットでの教育には少々懐疑的だった私。だが、実際に子どもたちが学んでいる様子をみると、「時代は変わっていますから、世の中も変わっていかなくてはならない」という松田校長の言葉に改めて、なるほどと思ったのだった。
(古屋江美子)