しかも、我が家の場合、なぜか熱を出したときは「好きな本を買ってくれる」というルールがあったため、むしろ楽しみとさえ思っていた。
比較的病弱ですぐ発熱した私。寝込むたびに増えていく図鑑、それを熟読できる豊富な時間。よく考えると、小学生時代の発熱が今の私の知識の礎になっているのかもしれない。
こういった寝込んだときを楽しむ気持ちは、どこまで共感されるものかと、Twitterなどで周囲に調査してみた。
結果としては、多くの家庭で「熱を出したら特別に○○をしてもらえる」という習慣はあるようで、全国的に共感できる話だということがわかった。
集まった「苦しさのはざまのワクワク」を細かく見ていこう。
■食べ物
・「寿司と果物ゼリー、高級アイスが食べられた」
・「少し高級なアイスクリームを食べさせてもらいました」
・「周りの友達がアイスクリームを買ってもらってるのを知り、ようやく風邪をひいて祖母にねだったら、こっぴどく怒られた思い出」
風邪と言えば、高級アイスと答える人が多数。確かにうちでもそんな記憶が。いまどきの小学生はハーゲンダッツなんだろうけど、30代後半以後は当然レディボーデン一択。
・「みかんの缶詰」
・「桃缶を主食代わりにしていた」
・「白桃の缶詰。寝込んだ時は、なぜかシロップも飲ませてもらえた」
我が家でも、普段は「飲むもんじゃない」と言われていたフルーツ缶詰のシロップを、風邪ひき時だけは飲ませてもらえたという経験が。
何か薬効成分が入っていたのだろうか。
・「不二家のプリンが買ってもらえた」
・「アルミの鍋焼きうどんが食べられる」
・「おかゆが食べ放題」
普段はあまり食べない病気食を楽しみにしていた人もいるよう。
私は北海道育ちで、でんぷんに砂糖とお湯を混ぜてかき混ぜた「でんぷんかき」をよく食べさせられていたのだが、あれは他の地域でも食べるものなんだろうか。
その他、「なぜか必ず大学芋を作ってもらった」「ひいばあちゃんが、なぜかいつもポテトチップスを買ってきてくれました」「なぜか必ずカレーでした」という今ひとつ身体に良くなさそうな回答もちらほら。
最後の「なぜか必ずカレー」は、ドラマ「熱中時代」で、風邪を引いた早苗さんが「(魚の)カレイが食べたい」と言ったのを、北野広大が聞き間違えてカレーを作ってしまったエピソードを思い出させる回答。もしかしたら、お母さんも最初はカレイの煮付けをつくるつもりが脳内変換されたのかも。
■飲み物
・「粉ポカリをお湯で溶かしたやつを飲むのが楽しみでした」
・「ポカリスエット飲み放題というのは、子どもながらにヨッシャーという感じがありました」
今でこそドリンクバー的なサービスがたくさんあるけど、私が小学生時代は飲み放題と言えば公園の水飲み場しかなかった。そんな時代のポカリ飲み放題は確かにヨッシャーだ。
・「たまござけ。いまだにどうしても母親のようにつくれない」
我が家は下戸一家だったので、卵酒が出てくることはなかった。これが原因で飲んべえになった人なんかもいるんでしょうね。
■そもそも平日家にいることの喜び
・「ワイドショー見放題」
・「教育テレビでしょう」
・「教育ラジオを延々聞いてました」
・「特別にテレビの前に布団を敷いてもらえたので、みんなが学校行ってるとき教育テレビ見放題」
昔はテレビは居間に1台が一般的。
■本、その他
・「腹痛の時に飲むビオフェルミンは甘くておいしかった」
・「咳止めシロップの味が好きでついつい飲み過ぎた」
薬の味にハマったという人も何人か。咳止めシロップの飲み過ぎはほどほどに。
・「普段は曜日と時間が決められていたファミコンを好きにやらせてもらえました」
・「レンタルビデオが許されたので、2カ月に1度倒れるたびに大長編ドラえもんや仮面ライダー観てました」
・「なぜかいつも決まってガンプラをもらっていました」
普段は制限されているもののリミッターが寝込んだときだけはずされる、というケースも多いよう。
しかし、ファミコンやレンタルビデオはともかく、発熱時に根気よくガンプラをやる気力はあったのだろうか。
・「必ず好きな本を買ってくれた」
・「ぼくの母親もすきな本買ってくれた。アシモフと星新一はそれで揃えた」
・「小児科の帰りに本屋が定番コース」
我が家にもあった「好きな本が買ってもらえる」ルール。これも意外に定番らしい。
しかも今回、このルールがあった、と答えてくれた人が、揃いも揃って「ザ・文化系男子タイプ」の人ばかり。
お子さんを文化系男子に育てたい親御さんは、ぜひ、風邪引いたら好きな本を買っていいルールの導入を。
今回調査した寝込んだときの楽しみ調査は、もう大人になった方々に「子供時代の寝込んだ時の楽しみ」を聞いたが、華麗にタブレットを操るいまどきの小学生に聞くとまた違った回答になるかもしれない。
ただ、風邪を引いたときの何とも言えない心細さと、それを埋めるほんの少しの楽しみは、きっとこれからも各家庭で受け継がれていくことだろう。
(前川ヤスタカ)