トラックの運転手をしながらモデルとして活動する女性が、どこかにいませんでしたっけ? いや、ごめんなさい、名前は忘れちゃったんだけど……。確かに以前、テレビで観ました。
スゴくないですか。運送業なんて、完全に“男の職場”だと思ってたから!

というか、そろそろ性差にとらわれるのはナンセンスなのかもしれない。例えばタクシー運転手に女性は多いし、駅で勤務する鉄道員にも女性が増えた気がする。

こんな風に思っていたのは、どうやら私だけじゃないらしい。イカロス出版は、7月5日より『それゆけ! 女性鉄道員』なるムックを発売しています。
「電車に乗っていると、女性のアナウンスって多いですよね。
明らかに、女性鉄道員さんが増えていると、肌で感じました」(イカロス出版・担当者)

というわけで、輝く“レールウーマン”にスポットを当てたこの一冊、ちょっと取り寄せて読んでみました。
……あぁ、いいね。「ゲレンデにいる女性は3割増しに見える」なる言い伝え(?)があるけども、鉄道員の制服に身を包む女性は愛らしく見える。一生懸命頑張ってるように見える。いや、まやかしではなく、本当に必死で頑張っているのですが。

では、一人ひとり紹介していきましょう。
「大井川鉄道」新金谷乗務区に勤める萩原愛さんは、“女性初のSL機関士”を目指して奮闘中。大井川鉄道では今も毎日SLが運行されており、そういう意味で全国的に稀有な鉄道会社と言えます。
では、彼女が運転士を志したきっかけについて。それは、高校時代でした。通学で利用していた小田急江ノ島線、先頭車両からの光景を目にした時に……
「特別な景色を見たわけじゃないんです。でも、そんな単純な光景に私はロマンを感じた。
運転士になってこの景色をもっと味わいたい。それが運転士になるきっかけでした」(萩原さん)
機関士になるためには甲種蒸気機関車免許を取得し、さらにボイラー技士の資格も必要。機関助手は、石炭を釜にくべて火を炊く“体力勝負”の業務を担う。険しき道ですが、彼女はこの道を選びました。

女性運転士、まだまだいます。京王井の頭線の運転士・佐藤絵美さんは、前職が旅行会社の添乗員。
団体旅行で新幹線を貸し切った際、車掌業務を間近に見て惹かれ、鉄道会社に転職。努力の末に車掌となり、その後の猛勉強の末、運転士になりました。
水島臨海鉄道の中原萌緑さんは約1年前に免許を取得し、デビューを果たしたばかりの新米運転士。現在は、乗客に負担をかけない「衝動のない停止」を心がけているそうです。「『女性だから』と思われないような運転をしたい」と、その志は非常に高いですよ!

もちろん、駅の仕事は運転士だけじゃないです。京急電鉄・久里浜乗務区に勤務する鈴木巴都美さんはアルバイトからスタートし、現在は車掌に。
結婚・出産も経験しましたが、3年間の産休を経て復帰したガッツの持ち主です。というのも不規則な勤務が当たり前の鉄道業界、小さい子どもを抱える母親の復帰はめったにないらしく。しかし「辞めるという発想はまったくなかったですね」(鈴木さん)と、その言葉は力強い。
JR東日本・蕨駅に勤める信田美貴子さんは、同駅の駅長として活躍中。なんと蕨駅120年の歴史の中で、唯一の女性駅長さんです。
「肩ひじ張らずに自然体で働くように意識しています。
そして、『私もできるかな』と駅長という仕事を身近に感じてくれる後輩が増えるとうれしいですね」(信田さん)

「レールウーマン」として、他にどんな仕事があると思います? ……ビックリしますよ。「車両整備員」、「車両技術者」、そして橋やトンネルを守る「土木技術者」などなど、まさに“男の職場”へ女性が進出しているケースも、同書では紹介されています。それにしても、ハンパじゃないな!

さて、今度は地方に目を向けてみましょう。実はローカル鉄道では、観光案内を行う「アテンダント」によるサービスがトレンドとなっているらしいです。例えば「わたらせ渓谷鐵道」にてアテンダントを務める籾山さんの前職は、輸入バッグ卸売会社の専務。美しい景色、そして車内を吹き抜ける風にハマり“わ鐵”を利用していた彼女は、いつしかアテンダントを目指していました。今度は、“魅力を伝える側”に回ったわけです。
こういったアテンダントが普及し始めたのは、2003年から。きっかけは、えちぜん鉄道による試みでした。同鉄道が「アテンダント」サービスを始め、乗客はハッキリと増加。それ以来、この取組は他の鉄道会社にも広がりを見せ始めます。なるほど、大げさではなくアテンダントが地方ローカル線を救うかもしれませんね!

さて、やはり世に増えていた“レールウーマン”たち。基本的に、仕事の内容は男女変わるものではありませんでした。女性だって泊まり勤務はあるし、早朝・深夜に働くのだって当たり前。たまたま性別が違うだけで、やっていることは何も変わらない。
でも、決して不変じゃないのです。
「今まで長きにわたって“男社会”だけでやってきた鉄道の世界に、女性が入り、増えていく。きっと、その刺激によって、今までとは違った新しい鉄道の魅力が生まれるだろう」(同書より)
確かに。期待しましょう。
(寺西ジャジューカ)