甲乙つけがたい、「アオハライド」お気に入りシーン
───1話、1胸キュンということで、洸と双葉のキュンとするやりとり等、エピソードで好きなシーンありますか?
金春 すごくいっぱいあるので、決めるのが難しいです(笑)。
───いっぱいあって、甲乙つけがたいんですよね。
金春 はい、本当に。エピソードではないんですが、全体的にセリフの言葉づかいも好きなんです。たとえば、ドロケーのシーンに洸の「結構 だいぶ 嬉しかった」っていうセリフがあって。「結構」と「だいぶ」って矛盾しているみたいだけど、そういう曖昧な言い回しのセリフが、この時の洸の気持ちを絶妙に表しているなと思うんです。他にもそういうセリフがたくさんあって…。原作のコミックス第10巻に同梱されたドラマCDでオリジナルストーリーを書いたんですが、原作のセリフをすごく研究して口調とか言い回しとか、少しでも近くなるようにがんばりました。
───お気に入りのキュンとするシーン(主人公以外でも)をあげるとしたら?
金春 リーダース研修のときにみんなで日の出を見るシーンがすごく好きなんですよ。あとは、悠里と双葉、修子の友情のシーンは全部好きですね。
たずさわってきた少女漫画作品での共通点
───いままで携わった少女漫画モノ、「君に届け」「NANA」などがありますが、「アオハライド」でそれらの経験が生きた、もしくはあえてそれらの作品とはここを変えた、とかありますか?
金春 同じ少女漫画といっても作品によってそれぞれ違うし、登場人物の気持ちも違うし、まったく別ものなので、いつも新しい気持ちで書くようにしています。ただ、あえていうならひとつ経験が生きたことがあります。
───「NANA」では何かありましたか?
金春 「NANA」は、原作がハチとナナの別々のお話から入っているんです。でも、アニメの最初のエピソードでハチとナナが出会わないと、「NANA」という作品がわかってもらいにくいということで、入れ替えをしてプロローグみたいな回を作りました。「アオハライド」の「unwritten」の扱いと少し似ているかもしれませんね。
アニメの脚本家を目指すにいたるまで
───ちなみに金春さんの高校時代で、キュンとしたエピソードなんてありますか?
金春 小さいキュンで、何があったわけでもないんですけど(笑)。ちょっと憧れていた男子がいて、ある日私が夕方ひとりで帰ろうとしていたら、校門の近くですれちがって、「さよなら」って言われたんです。そのときの光景を今も一枚の絵のように覚えています。
───高校時代からアニメの脚本家を目指していたんでしょうか?
金春 私、漫画とかアニメとかは普通に子供のころからみていて、高校生ぐらいになっても見つづけていました。でも、その頃はイギリスやアメリカの児童文学が好きで、大学では児童文学を専門に勉強したいと思っていました。
───それが上智大学の外国語学部という…!
金春あ、違います。
───大学在学中に通われたんでしょうか?
金春 はい。週に2回、夜2時間ずつ通いました。日本放送作家組合(現在は日本脚本家連盟)がやっていた教室で、私が通ったのはシナリオではなくて、漫画の原作教室でした。私が尊敬していた辻真先先生が教室長で。先生は当時、アニメのシナリオや漫画の原作をいっぱい書かれていたんです。最初の半年は教室形式で基本的なことを習って、そこから研修科に進みました。
───そこからアニメの脚本家にはどのように?
金春 習作は、辻先生が書かれていた作品の中から1つ選んで、そのシナリオを書く形で、先生の指導で何度も何度も直しを入れました。あるレベルをクリアできたらプロデューサーに見せましょうということになっていて、その結果、番組に採用されたんです。辻先生と出会えたことは、本当に幸運だったと思います。
アニメが好きで、アニメにかかわれることが喜び
───脚本家になって良かったことを聞かせてください。
金春 良かったことは、すごくアニメが好きなのでそれにかかわれること。いろんな作品に出会えましたし、ずっと憧れていた監督さんともお仕事ができました。お仕事をいただいて読んだときに、すごく好きになれるような原作が多くて、それもありがたいです。
───辛いことはありますか?
金春 もともと趣味だったものが仕事になってしまって、単純に楽しめなくなってしまったことですね。たとえば映画とかみても、ここがおかしいな、とか勝手に考えてしまうんです。後は、締め切りがつらいです(笑)。夏休みが終わるのにまだ宿題ができていないみたいな状態が、ずっと続いています。
───「アオハライド」はすべて作業を終えられているんでしょうか?
金春 そうですね、シナリオは、私以外に平見瞠さんと山田由香さんにも書いていただいたんですが、だいぶ前に最終話まで上がりました。今はアフレコに立ち合っています。
───アオハライドを見てくれる方へのメッセージを。
金春 みんなが体験したことがある学校時代のイベントやできごとを背景に、誰も手に入れたことがないような青春が描かれているのが、「アオハライド」の魅力だと思うんです。今、学校に通っている人はもちろん、もう高校時代はずっと昔という人にも、きっと共感できる作品です。性別や年齢をも問わず、いろんな世代の人に見ていただきたいですね。
(小林美姫)