「Y型か、それともU型か。あなたが好きなのは、どっち!?」

関口宏&三宅裕司風に聞いてみましたが、「そんなことより何の話してるの? 何でもっと分かりやすく書かないの? バカなの?」と困惑&お怒りの人も多いでしょう。


すみません、イヤホンのケーブルの話をしています。イヤホンのケーブルは、先端のプラグからしばらく先までは1本で、途中から右耳、左耳に向けてケーブルが2本に分かれていく……というのはみなさんご存じでしょう。

その2本に分かれたケーブルの長さが均等なのが、いわゆるY型。右耳、左耳にイヤホンを入れて、ケーブルを体の前に垂らせば、ケーブルの形が「Y」になりますよね。だからY型! 分かりやすい!

一方のU型は、二手に分かれたケーブルのうち片方が長いタイプ。「何でわざわざ違う長さにしてるの? 設計ミスなの? バカなの?」と怒らないでください。
長さを変えているのは、首のうしろからケーブルを通すためなんです。

Y型ではケーブルが身体の前でぶらぶらした状態になりますが、首のうしろを通せるU型では、そのぶらぶら感がありません。この安定感&安心感がU型の特徴であり、その片側がぶらーんと垂れ下がった形状から「U」型という名称で呼ばれているのです。

……と、説明が長くなりましたが、体の前でケーブルがぶらぶらするのが大嫌いな筆者は、熱狂的なU型の支持者。ケーブルが断線したり、イヤーピースをなくしたりして買い替えを迫られるたびに、U型のイヤホンを買い求めてきました。が、しかし。
近年のイヤホン売り場からは、そのU型が姿を消しつつあるのです!

数百種類のイヤホンを扱う家電量販店で「U型のイヤホンを探してるんですけど……」と聞いてみたところ、「U型ですか……」と店員さんは軽く困惑。「オーディオテクニカのこの2つと、あとはフィリップスのこれと……」と紹介してくれた商品は、たったの5つほどでした。

聞けば今は9割以上のイヤホンがY型ケーブルだそうで、「昔はU型のほうが多かったんですが、Apple製品に付属のイヤホンがY型だったこともあってか、Y型のほうが優勢になってきたんですよね」とのこと。

何で!? U型の方が使い心地がいいのに! と納得がいかない筆者は、続けて専門店にも直撃。新品イヤホンだけでも1000種類を扱うイヤホン・ヘッドホン専門店「eイヤホン秋葉原店」に訪れてみましたが、ここでも取り扱うU型ケーブルのイヤホンは数種類のみでした。

「売り場に並べているものは、ほぼ全てがY型ケーブルですね。
U型で今でも人気が高いのは、フィリップスの『SHE97xx』シリーズくらいでしょうか」

そう話すのは同店広報の松田信行さん。なぜそんなにもU型が減ってしまったのでしょうか。

「一つ可能性として考えられるのは音質の問題ですね。人の耳で感知できるレベルではないですが、ケーブルの長さが左右で異なるU型では、数値上では片方で音の遅延が起こりえます。また、ケーブルが体などに当たって起こるタッチノイズも発生しやすいと言えます」(松田さん)

細かな音質にこだわりはじめると必然的にY型を選ぶことになる……というわけなんですね。

「またU型ケーブルのイヤホンは、2000~3000円程度の比較的手軽な価格帯のものが中心ですが、1万円以上するような商品になると、ほぼ全てがY型になります。
イヤホンでも音質にこだわる人が増え、Y型の人気が上昇し、生産ラインを効率化するためにY型を増やして……という流れがメーカー側にもあったのかもしれませんね」(松田さん)

なお、筆者がU型を熱愛するあまりにU型の良さばかりに触れてきたが、同店の店員さんに聞いてみると、Y型にも「外しやすい」「長さが同じなので巻き取りやすい」「取り扱いがしやすいぶん、断線や劣化も起こりにくい」などのメリットがあるそう。ぐぬぬ……という感じだが、自然淘汰で敗れていった現状を見ると、U型の負けを認めざるを得ない。

それでもU型信者の筆者としては、その布教を諦めるわけにはいかないので、オススメのU型イヤホンを教えてもらった。

「先述のフィリップスの97シリーズの『SHE9713』ですね。5年以上前に発売された商品ですが、2000円程度という価格の手頃さと、それに見合わない音質の良さから人気が続いているイヤホンです。スマホなどに付属のイヤホンだとちょっと……という方には最初にオススメできる商品ですね」

このままだとU型が市場から消えてなくなる可能性もあるので、頼むからみんな買って!!
(古澤誠一郎)