フランスは欧州のなかでも比較的日本に関心がある国だが、ここまでパリで日本関連の企画展が重なることは珍しい。現地ではどのような様子なのか?

規模、人気ともにもっとも大きいのが「北斎」展だ。『北斎漫画』初版出版から200年を記念して、今年10月1日から来年1月18日まで行われている。第1期と第2期で一部作品が入れ替わり、約700の作品で北斎の生涯を追う。
浮世絵の手法は、19世紀後半のフランスで、ジャポニスムとして当時の印象派画家たちに、盛んに取り入れた。その素地もあり、フランスでの浮世絵画家の企画展は、毎回一定の注目度を保つ。今回の「北斎」展も、入場のために列ができることが頻ぱんで、人気の高さを十分に表している。

浮世絵から続く系譜は、現代にもつながる。浮世絵が高めの年齢層に受けるのに対し、日本の漫画・アニメは若い世代を中心に関心が高い。ジブリ作品はその筆頭だ。今年10月4日から来年3月1日まで開催するアール・リュディック美術館「スタジオ・ジブリのデッサン」展では、『天空の城ラピュタ』から『かぐや姫の物語』にいたる、歴代ジブリ作品のデッサン1300枚を展示した。
ジブリ作品は特殊である。

「北斎」展と同じ浮世絵でも、趣が異なるのがピナコテーク・ド・パリ「芸者」展である。今年11月6日から来年2月15日まで開かれている同展では、春画および芸者を描いた浮世絵が、200点以上集められた。なかには葛飾北斎の作品もあり、「北斎」展と合わせて鑑賞しても興味深い。展示の最後は明治以降の性描写のデッサン、現代の成人向け漫画、同性愛漫画が飾られ、過去から現代に至る日本のエロティズムの変遷も俯瞰できる。「北斎」展と同様に、こちらも高めの年齢層で、落ち着いた雰囲気の来館者が訪れている。
「北斎」「ジブリ」「芸者」という、日本を代表するテーマが並び立つパリ。日本文化への理解が、欧州他国と比べて高いフランスらしい今冬になった。
(加藤亨延)